1608サイズで定格電流8A 125℃対応の電源回路用チップビーズ:実装面積を半減
TDKは、電源回路用の積層大電流チップビーズ「MPZ1608-PHシリーズ」を発表した。定格電流は8Aで、1608サイズ(1.6×0.8mm)の電源回路用チップビーズとしては「業界最高水準」(TDK)だ。
TDKは2025年5月13日、電源回路用の積層大電流チップビーズ「MPZ1608-PHシリーズ」を発表した。定格電流は8Aで、1608サイズ(1.6×0.8mm)の電源回路用チップビーズとしては「業界最高水準」(TDK)だという。自動車/産業機器/民生機器などの電源回路向けで、動作温度範囲上限は125℃と車載用途の高温環境下で使用可能な高信頼性も実現した。同月から量産を開始している。
TDKは、信号回路や電源回路のノイズ対策に用いるチップビーズを、さまざまなサイズや定格電流で展開している。MPZ1608-PHシリーズは、同サイズの従来品である「MPZ1608シリーズ」を大電流化したものだ。定格電流は85℃環境下では8A(従来品は6A)、125℃環境下では5A(従来品は2A)になった。インピーダンスは22±3Ω(100MHz時)だ。
TDKの積層チップビーズはフェライトシートの上にペースト状の金属材料でコイルパターンを印刷し、これを積層することで製造している。理論上、金属材料を増やせば抵抗値が下がってより大きな電流を流せるようになるが、フェライトと金属をまとめて焼結すると収縮の仕方などが異なるので、性能や品質を保ったまま単純に金属材料を増やすことは容易ではないという。TDKはこれまでに培った積層技術によって金属材料を増やすことに成功し、8Aの大電流対応を実現したとしている。
部品点数を削減、回路も安定
これまで8A以上流れる回路では、1つのチップビーズでは定格電流が不足するため、並列に2個以上使用する構成が一般的だった。しかしこの構成ではチップビーズの個体差によってそれぞれに流れる電流の大きさが不均一になるので、1つのラインに大電流が集中し、部品の故障などを引き起こす場合があった。対して、大電流に対応したMPZ1608-PHシリーズを用いれば8Aに1点で対応できるので、並列回路よりも電流が安定するほか、実装面積の削減にもつながる。
MPZ1608-PHシリーズは、自動車/産業機器/民生機器など、電源ラインに幅広く利用できる。125℃環境に対応しているので、自動車のECUやパワートレインにも対応する。他に、5G対応に伴って電流値が大きくなっている基地局や、急速充電対応のスマートフォン/PC向け充電器などにも利用可能だ。
MPZ1608-PHシリーズのサンプル価格は1個50円(税別)。当初は月産1000万個を予定している。TDKは今後、さらに大電流対応のチップビーズのラインアップを拡充していく方針だ。
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