微細化前倒しや3層積層の強化……「市場で勝ち切る」ソニーの半導体戦略:「高密度化」が進化のけん引役に(4/4 ページ)
イメージセンサー市場において「勝ち切る」と目標を掲げ、技術力強化と成長投資を進めるソニーセミコンダクタソリューションズ。今回、同社社長、指田慎二氏ら幹部らが市場の見通しや事業戦略などを語った。
HDD向けレーザーでWDとも提携
戦略事業領域では熱アシスト磁気記録(HAMR)方式のHDD向けの半導体レーザーの成長も見込む。SSSはHDD大手のSeagate Technologyと15年のパートナーシップを得てHDD容量を大幅に向上させる技術を実現。2024年度から量産も始まっている。SSSは今回、同じくこのHAMR技術で長年の実績があるHDD大手のWestern Digitalともパートナーシップを締結したと明かした。
指田氏は「この2社はHDD業界におけるリーディングカンパニーだ。この領域におけるI&SS事業の顧客基盤は確実に広がっている。データセンターへの置き換えスピードなど、今後の市場動向は注視していく必要はあるが、HAMRの拡大は中長期的に着実に進んでいくと期待している」と述べた。
次期中計期間の設備投資、9300億円規模の可能性
同社はこれまで2025年にイメージセンサー市場の金額シェア60%というを目標を掲げてきたが、既報の通り、この達成が数年遅れる見通しを明かしている。高野氏は「シェア目標は残念ながらしばらく遅れる想定をしているが、市場において勝ち切るという目標に変化はない。60%の目標は変えず事業運営していく」と強調していた。
設備投資は第5次中計では投資を厳選し、約9300億円を投じた第4次中計より抑える方針に変更はないが、モバイルセンサーでの前述の先端プロセス導入が当初想定より早まったことおよび、建設コストの高騰などから当初想定比では増加する見込みだという。この先端プロセス関連の設備投資金額規模は、第5次中計期間のうち約半分を占める見込みだ。
さらに次期中計(2027年度〜2029年度)には先端プロセスの量産導入を順次進めていく方針で、高野氏は、この期間のイメージセンサー向け設備投資の総額は「前中計の規模感(約9300億円)に近いものになる可能性がある」とも説明。一方で、投下資本効率の改善のため「投資を適切なレベルに抑制するため、さまざまなファブライト施策を含め最適なあり形の検討を続けていく」とした。
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