自動車48V化に対応 日本のMOSFET市場に本格参入する台湾セミコンダクター:名古屋にも拠点設立
Taiwan Semiconductorは日本のMOSFET市場に本格参入すると発表し、「PerFET80Vシリーズ」「PerFET100Vシリーズ」の販売を開始した。発表に合わせて同社は日本のメディア向けに説明会を開催した。
Taiwan Semiconductor(以下、TSC)は2025年6月18日、日本での製品ポートフォリオを拡大し、MOSFET市場に本格参入すると発表。同日から、独自技術によってMOSFETの性能指数であるFOM(Figure Of Merit)で「業界トップクラス」(同社)の性能を実現したとするMOSFET製品群である「PerFET80Vシリーズ」「PerFET100Vシリーズ」の販売を開始した。発表に合わせて同社は日本のメディア向けに説明会を開催した。
売上高の55%が自動車向け
TSCは1979年に台湾の台北市で設立され、ディスクリート半導体やアナログICの開発/製造/販売を行っている。創業当初は主に整流ダイオードを手掛けていたが、2000年以降はMOSFETやLDOレギュレーター、LEDなどにも製品群を拡張している。2018年にはonsemiからTVSダイオード事業を買収した。現在は炭化ケイ素(SiC)製品の開発も行っている。
TSC プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのSam Wang氏は「半導体市場はここ2年間ほど厳しい状態だが、TSCは事業領域を継続的に拡大することで、特に産業領域で一定の売上高を確保している」と説明する。売上高の構成は55%が自動車向け、16%が民生向け、15%が産業/通信向けだ。自動車向けの需要が大きいことから、品質マネジメントシステムも強化しているという。
日本でMOSFET本格展開 FOMは「業界トップクラス」
日本では2003年に日本支社を設立し、以来ダイオードを中心に本格的に事業を展開してきた。現在の東京の事務所に加え、2025年中に名古屋市にも事務所を開設予定だ。日本支社は営業に加えて技術/品質サポートの役割も担っているといい、日本法人のタイワン・セミコンダクター・ジャパンでカントリーディレクターを務める佐藤正信氏は「顧客の声をしっかりと台湾の本社に伝えて新しい製品を展開していきたい」と述べる。
TSCが6月18日、日本市場で新たに展開すると発表したのがMOSFETのPerFETシリーズだ。40〜150V耐圧の製品群を順次展開する。スプリットゲートトレンチ構造を特徴としていて、これによって耐圧とオン抵抗のトレードオフを改善している。また、チップ小型化によってスイッチング特性の高速化を図った。MOSFETの性能指数であるFigure Of Merit(FOM)は「業界トップクラス」(同社)だという。最大ジャンクション温度は175℃で、AEC-Q101に準拠し、車載用途に対応している。スイッチング損失/電動損失も低減し、設計しやすさを高めたという。
80Vおよび100VのPerFETについては、AIサーバ/データセンターでの使用を想定する。小型化、高電圧化による消費電力削減などがメリットだという。車載48Vシステムでも小型/軽量化が期待できるとする。
「TSCは欧州の自動車メーカーとの取引実績が豊富だ。欧州で加速している48V化のようなトレンドが日本でも加速していくと見ている。欧州の顧客の声を取り入れた製品で日本の顧客にも貢献できると考えている」(佐藤氏)
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