無酸素銅を開発、1000℃の熱処理後も結晶組織は均一:AMB基板の回路層に適用
三菱マテリアルは、1000℃で熱処理した後も微細で均一な結晶組織を維持できる無酸素銅「MOFC-GC」を開発した。xEVなどに搭載されるパワーモジュール用のAMB(Active Metal Brazing)基板などに向ける。
AMB基板の品質ばらつきを抑えつつ、優れた導電率や熱伝導率を実現
三菱マテリアルは2025年6月、1000℃で熱処理した後も微細で均一な結晶組織を維持できる無酸素銅「MOFC-GC」を開発したと発表した。xEVなどに搭載されるパワーモジュール用のAMB(Active Metal Brazing)基板などに向ける。
xEVや再生可能エネルギーなどに用いられる電子機器部材では、大電流に対応するため高い導電率や放熱性能が求められる。このため、優れた導電率と熱伝導率を有する無酸素銅が注目されている。実際、xEVなどで電力制御や変換に用いられるパワーモジュールでは、AMB基板などを使って、半導体素子が発する熱を効率よく逃がしている。
AMB基板の多くは、回路層に無酸素銅を採用しているという。ところが、AMB基板を製造するには、セラミックスと無酸素銅を加熱接合する必要がある。この処理工程で従来の無酸素銅は、結晶粒が粗大化したり不均一の組織が生成されたりしていた。これが原因でAMB基板は、品質ばらつきや特性劣化などを引き起こす可能性があった。
そこで同社は、長年培ってきた高品質の無酸素銅の製造技術と、独自の材料設計技術などを駆使し、新たなMOFC-GCを開発した。新製品は、1000℃で加熱しても微細で均一な結晶組織を安定的に保つことができ、高いレベルで結晶粒の粗大化を抑えることができるという。その上、導電率や熱伝導率についても高い特性を実現した。
MOFC-GCは、板厚として0.3mmから1.2mmまでの製品を用意している。AMB基板の回路層に採用すれば、「光学認識性の向上」や「表面粗さ低減」「めっき外観の改善」「銅回路層/セラミックス接合界面における超音波画像検査性の向上」「基板の反りが安定」など、さまざまな効果が期待できるという。
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