22nmプロセス採用でMRAM内蔵、ルネサスがエッジAI特化の新マイコン:AI処理性能は256GOPS(3/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスはハイエンドマイコンの新製品「RA8P1」を発売した。「マイコンでエッジAI」というニーズに応えるもので、1GHz動作の「Arm Cortex-M85」と250MHz動作の「Cortex-M33」のデュアルコアによって「業界最高クラス」(ルネサス)だという7300CoreMarkのCPU処理性能を実現したほか、ArmのNPU「Ethos-U55」を搭載している。
初採用のMRAMで高速書き込み/読み出しが可能に
メモリは、微細化が限界に達しているフラッシュメモリに代えてMRAMを初めて採用し、1MバイトのMRAMと2MバイトのSRAMを搭載した。MRAMの採用もRA8シリーズ第2世代の大きな特徴になるという。MRAMは高い耐久性とデータ保持力のほか、高速で書き込み/読み出しが行えること、消去不要であること、低消費電力であることなどが利点だ。ルネサスは半導体集積回路の国際学会「ISSCC 2024」で高性能マイコン向けのMRAMの高速読み出し/高速書き換えの技術を発表していて、RA8P1にはその技術を盛り込んでいる。
さらに大きいメモリ容量を必要とする用途に向け、XIP/DOTF対応のOctal SPIインタフェースと32ビット外部バスインタフェースを備えている。4Mバイトまたは8Mバイトの外部フラッシュメモリを集積したSiP(System in Package)品も用意する。
周辺機能としては、マルチモーダルAIに向けて、パラレルカメラ入力やMIPI-CSI2、シリアルサウンド入力とPDMによる音声入力に対応。16ビットA-DコンバーターやグラフィックスHMI機能、各種シリアルインタフェースも搭載した。
さらに開発環境として、汎用マイコンとMPU向けの包括的なフレームワークである「RUHMI FRAMEWORK」(ルミ フレームワーク)を提供する。TensorFlow Lite、PyTorch、ONNXといったフレームワークをサポートしていて、モデルの最適化や量子化、グラフコンパイル、マイコン向けの変換を行う。葛西氏は「初心者にもプロフェッショナルにも使い勝手のいい開発環境だ」とする。現時点ではRUHMI FRAMEWORKが現在対応しているのはRA8P1だけだが、今後他の製品にも対応していくという。
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