STがNXPのMEMSセンサー事業買収へ、最大9億5000万ドルで:2026年上半期に完了予定
STMicroelectronicsがNXP SemiconductorsのMEMSセンサー事業を買収する。買収価格は最大で現金9億5000万米ドル(うち9億米ドルが前払い、5000万ドルは技術的なマイルストーンの達成に連動)で、取引は2026年上半期に完了する予定。
STMicroelectronics(以下、ST)は2025年7月24日(スイス時間)、NXP Semiconductors(以下、NXP)のMEMSセンサー事業を買収すると発表した。買収価格は最大で現金9億5000万米ドル(うち9億米ドルが前払い、5000万ドルは技術的なマイルストーンの達成に連動)で、取引は規制当局の承認などを経て2026年上半期に完了する予定だ。
車載向けに重点、売上高3億米ドルの事業を買収へ
NXPのMEMSセンサー事業の主なターゲットは、パッシブ(エアバック)およびアクティブ(車両ダイナミクス)の車載安全センサーやモニタリングセンサー(タイヤ空気圧監視システム[TPMS]やエンジン管理、コンフォート、セキュリティ)だ。また、産業用の圧力センサーや加速度センサーもラインアップしている。STは今回の買収によって車載安全アプリケーション向けIP(Intellectual Property)や技術、製品、高度な専門知識を有する研究開発チームを獲得し、MEMS技術および製品研究開発能力、ロードマップを強化することになる。
車載MEMS慣性センサーは、MEMS市場全体よりも速いペースで成長することが予想されているという。買収するNXPのMEMSセンサー事業は、2024年に約3億米ドルの売上高を計上していて、STは「今回の事業買収によって、STの粗利益率と営業利益率の両方に大幅な貢献が見込まれる」と強調している。
STのアナログ、パワー&ディスクリート、MEMSおよびセンサー部門のプレジデントであるMarco Cassis氏は「STの既存のMEMS製品ポートフォリオと、自動車の安全性と産業技術に焦点を当てたこれらの補完的な技術と顧客関係は、自動車、産業、消費者アプリケーションの主要なセグメントにおけるセンサー分野での当社のポジションを強化する。垂直統合型デバイスメーカー(IDM)モデルを活用し、技術研究開発、製品設計、先進的な製造能力を組み合わせることで、世界中の顧客により優れたサービスを提供していく」とコメントしている。
NXP、「長期的な戦略的方向性に合致しない」と売却を決断
NXPのアナログおよび自動車用組み込みシステム部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるJens Hinrichsen氏は、今回の事業売却について「NXPは、MEMSベースの車載モーションセンサーと圧力センサーの主要なサプライヤーで、長年にわたり顧客からの高い支持を得てきたが、慎重なポートフォリオ見直しを経て、当該事業が長期的な戦略的方向性に合致しないとの判断に至った」と説明。「STとの協議の結果、当該製品ラインはSTのポートフォリオ、製造拠点、戦略ロードマップに最適に適合すると判断した」と述べている。
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