HDD大手WDの四半期業績、前期比で増収ながらも増減益は微妙:福田昭のストレージ通信(284)
今回は米Western Digitalの2025会計年度第4四半期(2025年4月〜6月期)の業績を紹介する。
GAAPベースは減益、Non-GAAPベースは増益
ハードディスク装置(HDD)の大手ベンダーである米Seagate Technology(以降はSeagateと表記)と米Western Digital(以降はWDと表記)が、四半期の業績を相次いで公表した。発表日(現地時間)はSeagateが2025年7月29日、WDが同年7月30日である。そこで、SeagateとWDの四半期業績を続けてご報告している。本コラムの前回は、Seagateの業績概要を紹介した。今回はWDの業績概要をご報告する。
WDの会計期間はSeagateと同様に7月から始まり、6月を決算月とする。7月30日にWDが発表したのは2025年4月〜6月期の四半期業績であり、会計年度表記では「2025会計年度第4四半期(Q4FY25)」となる。
2025会計年度第4四半期(2025年4月〜6月期)の売上高は前期(前四半期)比14%増、前年同期比30%増の26億500万米ドルである。営業利益はGAAPベースが前期比11%減の6億8000万米ドル(前年同期は赤字)、Non-GAAPベースが前期比23%増、前年同期比147%増の7億3200万米ドルと計算方法の違いによって明暗が分かれた。
粗利益率はGAAPベースが前期比1.2ポイント増の41.0%、Non-GAAPベースが同1.2ポイント増の41.3%といずれも上昇した。売上高営業利益率はGAAPベースが前期比7.0ポイント減の26.1%、Non-GAAPベースが同2.1%増の28.1%となり、こちらも明暗が分かれた。

Western Digitalの四半期業績推移(旧WDのHDD事業と比較)。同社の公表資料から筆者がまとめたもの。なお営業損益はGAAPベースなので、業績概要のスライド(Non-GAAPベース)とは数値が一致していない[クリックで拡大]
「クラウド」分野の売り上げが全体の90%を占める
応用分野別の売り上げを見ていこう。WDは売り上げを3つの分野に分けて公表している。すなわち、「クラウド(Cloud)」(パブリックあるいはプライベートのクラウド向け)、「クライアント(Client)」(直接販売、あるいは代理店経由の販売によるOEM向け)、「コンシューマー(Consumer)」(リテールその他の販売チャンネルによる一般消費者向け)、の3つである。
「クラウド」分野の売上高は前期比16.0%増、前年同期比36.0%増の23億2900万米ドルとなった。クラウド分野が全体の売り上げに占める比率は90%で、前期から3ポイント増えた。
「クライアント」分野の売上高は前期比2.2%増、前年同期比2.2%増の1億4000万米ドルである。全体の売上高に占める比率は5%で、前期から1ポイント減少した。「コンシューマー」分野の売上高は前期比9.3%減、前年同期比12.3%減の1億3600万米ドルである。全体の売上高に占める比率は5%で、前期から2ポイント下降した。
HDD製品の販売台数は横ばいが続く
HDD製品の販売状況をもう少し詳しく見ていこう。販売台数はクラウド向けが930万台、クライアント向けが210万台、コンシューマー向けが150万台である。それぞれ前の四半期と比べて100万台増、20万台増、40万台減となった。HDD全体の販売台数は1290万台である。前の四半期と比べて80万台増えた。2024会計年度第4四半期(2024年4〜6月期)以降の傾向を見ると、全体では横ばい、クラウド向けが増加、クライアント向けが横ばい、コンシューマー向けが漸減となっている。

HDD製品の応用分野別と全体の販売状況。(2024会計年度第4四半期(Q4FY24)〜2025会計年度第4四半期(Q4FY25))。販売金額の単位は100万米ドル、販売数量の単位は100万台[クリックで拡大] 出所:Western Digital
HDD製品の総出荷記憶容量は190EB(エクサバイト:1018バイト)である。前の四半期と比べて14%増加した。内訳はニアラインHDDが170EB、非ニアラインHDDが20EBである。それぞれ前の四半期と比べて25EB増、1EB減となった。
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