「現場ですぐ使えるロボット」普及へ、ソニーが自社コア技術を外部提供:設定不要で何でもつかむ触覚センサーなど(2/2 ページ)
ソニーグループは、ロボットの開発を通じて培ったコア技術の外部提供を進める。重さや形状などの情報なしでさまざまなモノを把持できる触覚センサー、摩擦や慣性の影響を打ち消してシミュレーション通りの動作を再現するアクチュエーターなどを展開している。
「シミュレーションと違う……」を解消するアクチュエーター
「VA(Virtualized Actuator)」は、内部の摩擦や慣性を打ち消すことでシミュレーション通りの動作を再現する力制御型アクチュエーターだ。トルクセンサー、減速機、モーター、エンコーダー、ブレーキで構成されている。
一般的なロボット向けアクチュエーターは、内部の摩擦などによってシミュレーション通りには動作しない場合が多い。ソニーもヒューマノイドロボットの開発にあたって「シミュレーションでは良い動きが確認できても実際のロボットでは再現できない」という問題を経験していて、そこからVAの開発が始まったという。
「生産現場の自動化のためにロボットを導入する際も、意図した通りに動かすために治具を設置したり、先端にスポンジを取り付けたりと細かい調整を行う場合がほとんどで、再現性がない。うまく動かせるようになってもしばらくするとまたラインが止まってしまうこともある。ロボット技術は予測しない事態にうまく対応できる自律性が重要だ」(開発担当者)
VAは、ソフトウェア上で粘性(摩擦)や慣性といったパラメータを仮想的に調整できる。内部の摩擦や慣性の影響を受けないように設定すれば、運動方程式に忠実なシミュレーション通りの制御が可能になる。EtherCAT対応で、既存システムへの導入も容易だ。
逆に、摩擦や慣性を大きくするようにも設定できる。ゲーム機に搭載すれば、ハンドルや道具の重さ/大きさをリアルに感じるような任意の表現が実現する。
独自演算技術で複数個の設定にも対応
下の動画は、NARI-TouchとVAを組み合わせたロボットアームと駄菓子を引っ張り合うデモの様子だ。「最小限の力でつかむ」というNARI-Touchの特徴を生かして駄菓子がつぶれないよう把持している。関節部分にはVAを搭載し、どの程度強く姿勢を保持するか調整可能だ。動画の前半では柔らかく、後半では固く姿勢を保持している。
固い姿勢保持は工場などの正確性を重視する用途に適する。柔らかい姿勢保持は人とぶつかった際などに衝撃を逃がしてケガを防止できるので、介護や商業施設などでの利用に適する。
このデモではVAの制御に独自の演算技術「一般化逆動力学(GID:Generalized Inverse Dynamics)」を用いている。複数個のVAを用いる場面では変数が多く設定が複雑になるが、GIDを用いれば、さまざまな拘束条件を考慮しながら簡単に複数のVAを協調して動作させられる。
ソニーは、外部のパートナーなどと提携し、こうしたコア技術の社会実装を進める計画だ。
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