高機能フィルム市場、回復局面から緩やかな成長へ:6Gや空飛ぶクルマなど新たな市場も
矢野経済研究所は、日本、韓国および台湾における高機能フィルム市場を調査し2027年までの主な高機能フィルム成長率(メーカー出荷数量ベース)を発表した。これによると、2024年からの「回復局面」が終了し、2026年以降は新たな市場の創出などもあって「緩やかな成長期」を迎えると予測した。
中国ローカルフィルムメーカーの台頭など市場に変化も
矢野経済研究所は2025年8月、日本、韓国および台湾における高機能フィルム市場を調査し2027年までの主な高機能フィルム成長率(メーカー出荷数量ベース)を発表した。これによると、2024年からの「回復局面」が終了し、2026年以降は新たな市場の創出などもあって「緩やかな成長期」を迎えると予測した。
今回の調査は、「ディスプレイ・光学」「電気・電子」「一般産業」の用途で用いられるベースフィルム(原反)および、加工フィルムなどの高機能フィルムを対象とした。具体的にはPETフィルム、PIフィルム、MLCCリリースフィルム、リサイクルフィルムおよび、新規開発中の高機能フィルムなどが含まれる。調査期間は2025年4〜7月。
2024年の成長率は、光学用PETフィルムが前年比105.2%、一般産業用PETフォルムが同114.6%、MLCCリリースフィルムが同121.1%、PIフィルムが同115.5%であった。これらの数値に対しフィルムメーカー各社は、「コロナ禍の特需とその反動減から抜け出し、実需に即した動きへと回復した一年であった」と分析している。
2025年の成長率は、各フィルムとも前年比103〜108%程度を見込む。さらに、2026〜2027年に向けては、6G(第6世代移動通信)やレベル3以上に対応した自動運転車、空飛ぶクルマ、航空宇宙、ソフトロボットなど新たな市場創出もあって「一桁ペースの緩やかな成長が続く」と予測した。
矢野経済研究所は、ここ数年における市場の変化についても触れている。それは、中国ローカルフィルムメーカーの台頭である。例えば、光学用PETフィルム市場では、中国ローカルフィルム企業からの供給比率は2019年に約55%となり、2024年は約64%を占めていると推計した。
PIフィルム市場でも、ミドルエンド以上の市場において、中国ローカル勢の販売量シェアは、2019年の約4%に対し2024年は約11%まで上昇した。MLCCリリースフィルム市場でも、中国勢のシェアは2022年の1%未満から、2024年は約4%に急拡大しているという。
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