1206サイズで10μH、光トランシーバー用薄膜インダクター:直流抵抗70%減で発熱や損失も抑制
TDKは2025年8月26日、1206サイズで10μHの高インダクタンスを実現した光トランシーバー用の小型薄膜インダクター「PLEC69Bシリーズ」を発表した。他社の同形状、高インダクタンス製品と比較して直流抵抗は約70%減、定格電流は1.7倍となっている。
TDKは2025年8月26日、1206(1.2×0.6mm)サイズで10μHの高インダクタンスを実現した光トランシーバー用の小型薄膜インダクター「PLEC69Bシリーズ」の開発および量産を発表した。
「PLEシリーズ」は薄膜積層コイルと独自の金属磁性材料を有する小型インダクターで、TDKは2021年からTWS(True Wireless Stereophone/完全ワイヤレスイヤフォン)やスマートウォッチなどの電源回路用途として展開している。
新製品のPLEC69Bシリーズは光トランシーバーのバイアスティー回路(1本の交流信号ラインに直流電圧を重畳する回路)を主な用途とする。TDK独自のファインパターン形成技術によってコイルの巻き数を増やし、シリーズ従来品よりも高い10μHのインダクタンスを実現した。この高い特性により、10M〜200MHzの広い周波数帯域で信号と電力を分離して通信品質の向上に寄与するとしている。
AI普及で小型化が求められる光トランシーバー用部品
現在、AIの普及によってデータセンター向けの光トランシーバーには高速大容量であることが求められている。そのためにはトランシーバー自体のサイズはそのままに、より回路を集積させるために、インダクターのような部品も小型化が必要となる。
バイアスティー回路では、インダクタンスの異なるインダクターを複数組み合わせることで遮断する交流信号の周波数帯域を拡大する。このうち周波数高域側をカバーする低インダクタンス製品は小型品が存在するが、高インダクタンス製品は1608サイズが主流だった。
TDKはChatGPTの台頭などで小型化のニーズが増えてきたことから、2023年から開発に着手。同社が独自開発した高透磁率の金属材料と、2巻/層以上の薄膜コイルによって小型サイズのまま高インダクタンスを実現可能なPLEシリーズの特長を生かして、新製品のPLEC69Bシリーズを開発したという。
高透磁率の金属材料を採用していることにより、直流抵抗は1.4Ωと他社の同形状、高インダクタンス製品と比較して約70%低減し、電力損失や発熱を抑制している。定格電流も他社製品と比べて1.7倍の0.2Aを実現、125℃の高温環境下で動作する信頼性も備えている。TDKは「光トランシーバー向けのインダクター製品として、小型で高インダクタンス、かつ最高水準の電気特性を実現した」と述べる。
1個当たりのサンプル価格は40円(税別)で、TDKの甲府工場(山梨県南アルプス市)にて、月産1000万個(当初)の生産を予定する。
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