リサイクルが簡単な水系電池実現へ、日東紡と東北大が新電極材料:100℃以下で原料に分解
日東紡と東北大学の共同研究チームは、常温(25℃)で水系電池の電極材料として活用できる「有機レドックス高分子」を開発した。この高分子は100℃以下の環境で原料に分解できることも実証した。リサイクルが容易な水系電池の開発が可能になる。
親水性に優れた有機レドックス高分子を合成
日東紡と東北大学多元物質科学研究所の岡弘樹准教授らによる共同研究チームは2025年8月、常温(25℃)で水系電池の電極材料として活用できる「有機レドックス高分子」を開発したと発表した。この高分子は100℃以下の環境で原料に分解できることも実証した。リサイクルが容易な水系電池の開発が可能になる。
有機レドックス高分子は、可逆的に電荷貯蔵が可能だ。このため電池の電極材料として期待されている。ところが、その多くは疎水性で、水系電池へ応用するには親水性を付与する必要があった。原料に分解することも容易ではなかったという。
共同研究チームは今回、水に溶かすとプラス電荷を帯びて高い親水性を示すポリアミン「ポリアリルアミン」に対し、簡便な縮合反応を用いて、高い電荷貯蔵機能を備える「p-ジヒドロキシベンゼン」を導入した。これによって、親水性に優れた有機レドックス高分子「p-ジヒドロキシベンゼン導入ポリアミン」を合成した。p-ジヒドロキシベンゼンの導入率は、反応温度を変えることで調整できるという。
100回充放電後も、99%以上の容量を維持
負極材料にはp-ジヒドロキシベンゼンを43%導入したポリアミンを、正極には白金/炭素触媒を、電解液には酸性水溶液をそれぞれ用いた空気電池を試作し、その性能を測定した。この結果、電池容量は理論値の99%以上に達した。充放電を100回繰り返した後に、99%以上の容量が維持できることも確認した。
さらにp-ジヒドロキシベンゼン導入ポリアミンは、強酸性水溶液中において80℃で72時間加熱すれば、その91%を原料に分解できることも実証した。この数値は、材料のリサイクルが可能なことを示すものだという。
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