Infineon、GaN搭載の軽EV用インバーター開発で中国メーカーと協業:電動二輪車用途で
Infineon Technologiesが、中国Ninebot子会社のLingji Innovation Technologyと窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス搭載の軽電気自動車(LEV)向けインバーター開発で協業する。InfineonがGaNパワー半導体を供給し、Lingjiの電動二輪車用インバーターシステム開発をサポートする。
Infineon Technologies(以下、Infineon)は、中国Ninebot子会社のLingji Innovation Technology(以下、Lingji)と窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス搭載の軽電気自動車(LEV)向けインバーター開発で協業する。InfineonがGaNパワー半導体を供給し、Lingjiの電動二輪車用インバーターシステム開発をサポートする。
中国の新基準に対応する「最適な選択肢」
Infineonが2025年9月9日(ドイツ時間)、LingjiとLEV分野におけるGaN技術開発の推進に向けた覚書を締結したと発表した。この覚書は、48〜72Vの広い電圧対応およびインバーター制御を最適化するGaNモーター駆動技術を設計し、ハイエンドモデルやシェアリングモビリティ用途向けに小型かつ互換性の高いコアコンポーネントを提供することを目的としているという。
Lingjiは、Infineonの新世代「CoolGaN G5」パワートランジスタをベースにした高性能電動二輪車インバーターシステムを開発。CoolGaN G5の高スイッチング周波数や高効率を、自社開発のインテリジェントアルゴリズムと組み合わせ、駆動系効率および電力密度の向上、走行距離とサイズに関する公的要件への適合を目指すとしている。中国の新たな基準では、電動スクーターのプラスチック質量は車両質量の5.5%までと定められているため、受動部品数を削減してスペースを最適化できるGaNデバイスは「最適な選択肢」となったという。
Infineonによると、LEVは手頃な価格で入手しやすい電動モビリティへの入り口として注目されているという。また自動車とは異なり、LEVは基本的に大規模な充電インフラに依存することなく、取り外し可能なバッテリーによって家庭の標準コンセントで充電できる。Infineonは、市場が2030年までに3400億米ドルに達するというMcKinseyの予測を示しつつ、「LEVはその手頃な価格、入手容易性、環境メリットによって世界的な車両電動化の移行をけん引している」と強調している。
Infineonのオートモーティブ部門エグゼクティブバイスプレジデント兼最高営業責任者のPeter Schaefer氏は「当社の最先端GaNソリューションによって、顧客はLEVインバーターにおいて、よりコンパクトな設計、システム重量の削減、高効率化を実現できる。さらに、当社はデザインインの労力を最小限に抑えながら市場投入期間を短縮する包括的なシステムソリューションを提供する」とコメントしている。
LingjiのゼネラルマネジャーであるXu Chao氏は「Infineonの最先端CoolGaN G5パワーデバイスと当社のインテリジェントアルゴリズムを融合させることで、消費電力と排出ガスの削減を実現しつつ、より滑らかで快適な走行体験を提供するLEVインバーターが実現できる」と述べている。
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