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300℃で使用可能なパラジウム合金水素透過膜を開発:高純度水素精製で加熱設備が不要
田中貴金属工業は、300℃という低温領域で使用できるパラジウム(Pd)合金水素透過膜を開発、サンプル出荷を始める。高純度の水素精製工程で、加熱用の設備を追加する必要がなくなり、設備コストの削減につながるとみている。
PdCu39に着目、独自の熱処理法で完全なbcc相を実現
田中貴金属工業は2025年9月、300℃という低温領域で使用できるパラジウム(Pd)合金水素透過膜を開発、サンプル出荷を始めると発表した。高純度の水素精製工程で、加熱用の設備を追加する必要がなくなり、設備コストの削減につながるとみている。
高純度の水素を精製するには、メタノール水から生成した水素ガスを、水素透過膜が組み込まれたモジュールで精製するのが一般的である。ところが、PdCu系合金膜のなかで水素透過性能が最も高いといわれるPd含有率60%、Cu含有率40%の合金「PdCu40」は、400℃以上の温度領域でないとその性能が発揮されないという。このため従来は加熱用の設備を新たに導入するなど、追加の対応が必要であった。
そこで今回は、Pd含有率61%、Cu含有率39%の合金「PdCu39」に着目した。独自の熱処理方法を用いることで、完全なbcc相(体心立方格子構造を持つ金属の相)を実現することが可能となった。これにより、高い水素透過性能を備えつつ、300℃前後の低温で水素を精製できるPd合金水素透過膜の開発に成功した。
なお、評価用サンプル品は板厚が最小10μm、板幅が最大120mmのシート状(角や円)で提供される。
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