SiFiveの新RISC-VコアはAI特化 メモリ管理の革新で性能向上:エッジからデータセンターまで(3/3 ページ)
SiFiveは、プロセッサファミリー「Intelligence」の第2世代製品を発表した。同製品はAIワークロード向けにカスタマイズされていて、幅広い用途でのAIワークロードを高速化するための大きな進歩となる。
ハイパースケーラーのカスタムチップにも採用か
Intelligenceファミリー第2世代は、カスタムチップの自社開発を急速に進めるハイパースケーラー企業にも進出しつつある。こうした企業は引き続き、自社のアプリケーションコアにArmを採用しているが、制御/アシスタント機能の実現に向け、複数のSiFive XMコアや独自のハードウェアをSiFiveのIntelligenceコアと積極的に統合しているところだ。
ハイパースケーラー企業は「データセンターでNVIDIAに取って代わる」という野心を抱いていて、XMコアで最大4PFLOPSの性能レベル達成を目指している。
SiFiveは、中国のRISC-Vエコシステムが急成長していることを認め、データセンターからエッジに至るまで、Intelligenceファミリー全体で重要なデザインウィンを獲得したとしている。同社は、守秘義務契約があるため特定の顧客名については明かしていないが、複数の中国顧客企業からIPの強力な需要があることを示唆した。
バルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC:Barcelona Supercomputing Center)の主席リサーチエンジニアでありRISC-Vアンバサダーを務めるTeresa Cervero氏は「SiFiveの発表は、エコシステムにとって前途有望な素晴らしいニュースだといえる。それは、主にAIの分野において、現在と未来の複雑な課題に取り組む上で、RISC-Vがいかに現実的かつ強力な存在であるかを示しているからだ。『RVA23』/『RVV 1.0』をサポートし、ハードウェアをさまざまな市場の特定のニーズに適応できるようカスタマイズ可能なRISC-V産業ハードウェアを実現することは、未来の高性能インフラを設計するための真の力を解放し、ソフトウェアレイヤーを強化して、既存の商用アーキテクチャに対して完全に競争力がある代替手段となる上での重要な鍵となる」と述べている。
SiFiveが4年以上にわたりRISC-V AIへの拡張投資を行って構築した、Intelligenceに向けた堅牢なソフトウェアスタックは、スケーラビリティをサポートする。XMシリーズでは、MLランタイムが既に、単一チップ上の複数のXMクラスタ全体にワークロードを分散させている。シングルダイを超えてスケーリングするためには、インタープロセッサ通信(IPC)ライブラリをさらに開発する必要があるが、それは依然として、複数のXMを単一チップでインスタンス化するという顧客ニーズによって推進される、明確なロードマップ項目だ。
Intelligenceファミリー第2世代は、革新的なメモリアーキテクチャや、特殊なインタフェース、高度な処理能力を備え、AIハードウェアが進化し続ける中、RISC-Vを重要なプレーヤーとして位置付けている。これにより、最小のエッジデバイスから最大規模のデータセンターに至るまで、比類ない柔軟性と性能を提供しているのだ。
【翻訳:滝本麻貴/田中留美、編集:EE Times Japan】
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