後工程に拡がるCMPスラリー需要 「世界一」狙う富士フイルムの成長戦略:先端パッケージング向け製品を発売
富士フイルムは2025年9月29日、先端パッケージング向けCMPスラリーの発売を発表。ハイブリッドボンディング向けに最適化したもので、同日の記者発表会で後工程を含むCMPスラリーの成長戦略を紹介した。
富士フイルムは2025年9月29日、先端パッケージング向けCMPスラリーの発売を発表した。同日に半導体材料事業の記者説明会を開催し、CMPスラリーの後工程領域を含めた成長戦略を紹介した。
事業全体の売り上げ25%を占める成長ドライバー
富士フイルムの半導体材料事業では「2030年度に売上高5000億円を確実に達成すること」を中期目標として掲げている。同社取締役 常務執行役員でエレクトロニクスマテリアルズ事業部長の岩﨑哲也氏によると、CMPスラリーの2024年度の売り上げは、2015年度と比べて4.9倍に伸び、半導体材料事業全体の約25%を占めるに至ったという。
CMPスラリー市場では世界2位、中でも銅配線用途では世界1位のシェアを獲得*)。岩﨑氏は「CMPスラリーは半導体材料事業における成長ドライバーだ」と強調する。「幅広いラインアップで半導体製造プロセスを一気通貫でフォローできる『ワンストップソリューション』、大手半導体メーカーの製造拠点近くに自社の生産拠点を置き、二人三脚で課題解決を支援する『地産地消地援』、技術優位性などの強みを生かし、2030年度までにCMPスラリー市場でシェア1位を獲得したい」と続けた。
*)出典:富士経済「2025年 半導体材料市場の現状と将来展望」
後工程にもCMPプロセスが拡大
富士フイルム シニアフェローの野口仁氏は「半導体の高性能化に伴う回路の微細化、多層化によって、CMPプロセスが半導体に必要不可欠になった。特に電気信号を伝達する銅配線層は今後も多層化が見込まれる。同時に、先端パッケージングの発達により、CMPプロセスが後工程にも拡大してきた」とする。
現在、先端パッケージングのチップレット集積では、バンプ接合の「フリップチップボンディング」が主流だが、チップ同士を直接接合するパッケージング技術「ハイブリッドボンディング」を使えば、より高密度な接続ができる。
ハイブリッドボンディングを行うには、チップ同士の接合面を平滑化する必要がある。そこで用いられるのがCMPスラリーだ。
これまでは前工程用のCMPスラリーを流用して提供してきたが、2025年9月29日からは、先端パッケージング向けCMPスラリーの販売を開始。銅と酸化膜が混在するハイブリッドボンディング向けに添加剤、防食剤、砥粒などの処方を最適化していて、すでに大手半導体メーカーに採用されているという。
野口氏は「先端半導体向けには最先端ノードの拡販や、今後新しい金属が登場しても同じように使えるCMPスラリーの開発を目指す。半導体メモリでは生成AIで使われる広帯域メモリ(HBM)向けに拡販する。先端パッケージング領域では、ハイブリッドボンディング以外でもCMPスラリーが使われる可能性のある領域に向けて開発を行う。以上の3軸で、2030年度までのトップシェアを目指したい」と語った。
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