高コスト効率の産業向け誘導型位置センサーIC、ルネサス:ウェブベースの新たなツールも提供
ルネサス エレクトロニクスは、高い精度で位置を検出でき、丈夫でコスト効率に優れた「誘導型位置センサー(IPS)IC」として3製品を発売、量産を始めた。同時にセンシング素子の設計を容易に行えるWebベースの新たなツールの提供も始める。
産業機器からロボット、医療システムまで幅広い用途に適用
ルネサス エレクトロニクスは2025年10月、高い精度で位置を検出でき、丈夫でコスト効率に優れた「誘導型位置センサー(IPS)IC」として3製品を発売、量産を始めると発表した。同時にセンシング素子の設計を容易に行えるWebベースの新たなツールの提供も始める。
ルネサスのIPS製品は、電磁誘導に基づく非接触位置センシング技術を用いている。シンプルな金属ターゲットとデュアル/シングルコイルを用いて、絶対的な回転位置やリニア位置、円弧位置を検出する。高温やほこり、湿気、機械的振動、電磁干渉など、厳しい使用環境でも安定した動作を維持できるのが特長だ。
新製品は、ロボットやFAに用いられている磁気/光学式エンコーダーからの置き換えを狙った「RAA2P3226」、産業モーターやアクチュエーターなど高速モーター制御に適した「RAA2P3200」および、電動工具や医療機器など低速モーター位置検出用の「RAA2P4200」である。
これらの製品は、誤差がフルスケール0.1%未満という高い精度で、ターゲット位置を検出できる。動作温度範囲は−40〜+125℃、動作電圧は3.0〜5.5Vだ。また、RAA2P3226とRAA2P3200は、最大回転数600krpmまで対応でき、伝搬遅延は100ナノ秒未満に抑えた。さらにRAA2P3226は、最大19ビットの解像度と0.01度という精度で絶対角度を検知するデュアルコイルセンシングをサポートしている。
なお、これら3製品に加え、2025年第4四半期中には車載用IPSとして「RAA2P452x」と「RAA2P4500」も発売の予定。デュアルチャネルの「RAA2P452x」をルネサス製マイコンと組み合わせれば、自動車用機能安全規格ISO 26262のASIL Dに準拠した機能安全設計が可能だ。
ルネサスは、Webベースの「誘導型位置センサー コイル最適化ツール」も用意した。コイルレイアウトやシミュレーション、チューニングを自動化でき、オンライン上で試作を繰り返し実行可能になる。これを活用すれば性能を正確に予測でき、高性能なセンサー開発の効率化ができる。
ルネサスは、RAA2P3226と他のデバイスを組み合わせた2つの「ウイニング・コンビネーション」も用意した。「小型BLDCモーターサーボ」と「ターンテーブルシステム」だ。これを用いれば、顧客が抱える設計リスクを低減しつつ、新製品を市場に投入するまでの期間を短縮できるという。
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