300mm化、双方向スイッチ、車載――Infineonの最新GaNデバイス技術:「数年で製造コストをSiと同等に」(2/3 ページ)
Infineon Technologiesのオーストリア・フィラッハ拠点で2025年10月、同社の窒化ガリウム(GaN)事業部門責任者であるJohannes Schoiswohl氏が最新技術について語った。
300mm GaNのサンプル提供開始、「数年でSiと同等の製造コスト」へ
Schoiswohl氏が今回、GaNパワー半導体分野の最新のイノベーションとして挙げたのが300mm GaNウエハー技術と双方向GaNスイッチ、そして車載用GaNだ。
300mmウエハープロセスへの移行についてSchoiswohl氏は「半導体業界では工場の大規模化だけでなく、大型ウエハーの大型化もが重要であり、より低コストで製造可能になる。これはもちろん当社にとって大きなメリットで、利益率向上につながる。それだけでなく、市場価格の引き下げも可能となる。これによってGaNの普及が加速できるのだ」と強調。同技術は2024年9月に発表したものだが、同氏は「まさに今この瞬間にも顧客にサンプルを発送中だ。われわれは、発表からサンプル提供まで12カ月という約束を確実に果たした。そして今後12カ月で300mmウエハー技術の量産拡大を開始する」と語った。
300mmウエハープロセスへの移行では、既存の300mm Siウエハープロセスの製造設備を転用できる点も利点として挙げていて、Schoiswohl氏は「これはまさに既存設備投資の最適化であり、市場の成長に合わせてラインを転換できる。また、300mm装置は精度などの面で考えうる最先端の装置だ。それによって技術のさらなる発展も可能になる」と説明。「GaNは現時点では製造コストがSiより高いが、今後数年でSiとGaNの製造コストを同等にすることを目指している。これはわれわれの確固たる目標であり、達成に向けた確かな計画を有している」と強調した。
一方で既存プロセスとは、エピタキシャル成長用の装置が大きな相違点になる。そして300mm GaNをサポート可能なMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置はまだ初期段階の新たな装置で、最近の米国EDNでのインタビューでも「非常に新しいのが、300mmエピ装置だ。Si層上で形成するGaN層は、結晶構造が異なるため、さまざまなひずみや不一致が生じる。さらに、ウエハー破損の可能性も非常に高い。300mm GaN製造には、エンジニアリングに関する大量のノウハウがつぎ込まれることになる」などとコメントしていた。Schoiswohl氏は今回、300mm GaN向けエピ装置については「既に複数メーカーから購入可能で、実際に複数装置を導入している。ただし、さらなる発展が必要であり、現在も装置メーカーと協力し開発が進められている」と語った。
当然ながら同社が導入している装置メーカーについては明かさなかった。なお業界においてはAIXTRONやVeeco Instrumentsらが300mm GaN向けのMOCVD装置を発表している。
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