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TSMCはもはや世界の「中央銀行」 競争力の源泉は150台超のEUV露光装置湯之上隆のナノフォーカス(85)(3/5 ページ)

2025年第3四半期、TSMCは過去最高の売上高と営業利益を記録した。なぜ、TSMCはここまで強いのか。テクノロジーノード別/アプリケーション別の同社の売上高と、極端紫外線(EUV)露光装置の保有台数を基に、読み解いてみたい。

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TSMCの四半期のノード別ウエハー投入枚数

 図7に、TSMCの四半期におけるノード別ウエハー投入枚数を示す。この図から分かるように、2021年Q1以降、総投入枚数は概ね四半期あたり400万枚前後で推移している。


図7:TSMCの四半期のノード別ウエハ投入枚数(〜2025年Q3)[クリックで拡大] 出所:Claus Aasholm, “One Peak short of Twin Peaks”, Semiconductor Business Intelligence, Oct 22, 2025のデータを基に筆者作成

 次に、積み上げ方式ではなく折れ線グラフで、ノード別ウエハー投入枚数の推移を示したものが図8である。

図8:TSMCの四半期のノード別ウエハ投入枚数(〜2025年Q3)
図8:TSMCの四半期のノード別ウエハ投入枚数(〜2025年Q3)[クリックで拡大] 出所:Claus Aasholm, “One Peak short of Twin Peaks”, Semiconductor Business Intelligence, Oct 22, 2025のデータを基に筆者作成

 この図には、極めて重要なポイントが含まれており、以下に列挙する。

(1)2020年Q1以降、ウエハー投入枚数が増え続けているのは、先端の5nmと3nmのみである
(2)7nmよりルールが緩いノードは、2021年後半〜2022年前半にピークを迎えている
(3)ピークアウト後、現在に至るまで、7nmより緩いノードは全て投入枚数が減少している

 以上から、TSMCの5nmおよび3nmラインはほぼフル稼働状態にあると推察される。他方、7nmより緩いノードを生産する工場は、稼働率が明らかに低下していると考えられる。

 例えば、TSMCが依然として先端ノードの一つと位置付けている7nmの投入枚数は、2021年Q2に48万枚でピークに達したものの、2025年Q3にはピーク時の約60%である29万枚にまで減少している。

 このように、ウエハー投入枚数においても、7nmをはじめ、成熟ノードが低調であることが確認できた。つまり、米国による中国への半導体規制は、ブーメランのように、TSMCの成熟ノードの売上高を直撃しているのではないか。

 そして、ちょうどこのタイミングで、TSMCの主要ビジネスは、スマホ依存からAI半導体中心へと大転換を遂げた。

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