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半導体の一大新興市場インド 材料メーカーは後工程に注目田中貴金属やIndiumなど

半導体において最大の新興市場ともいえるインド。材料メーカーも新たなビジネスチャンスを求めて攻勢をかける準備を整えている。

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 2025年9月初旬、インドでは半導体関連のニュースが見出しを独占したが、同国の野心は半導体チップを接合する重要な材料の供給企業にかかっている。グローバル企業は、ワイヤやペースト、はんだ、フラックスなど、チップの耐熱性や確実な電気伝導性、先進の2.5次元(2.5D)/3Dパッケージングへの適合性を決定するこれらの材料を供給するためにインド市場に注目している。

 インドには電子機器の組立用のはんだ付け消耗品を供給する現地企業の強力な基盤があるが、先進パッケージングに必要なチップグレードの、超微細な、高純度の材料の国内生産は依然として限られている。そのため、インドの半導体業界は輸入と初期段階の研究開発に頼らざるを得えない状況にある。

インドの国旗

 「SEMICON India」に出展した田中貴金属工業の技術担当者は「ボンディングワイヤは、OSATにおいて、ICを基板に接続するために不可欠な材料である。銀接着剤は、シリコンチップとリードフレーム間のダイアタッチメントに使用し、高い熱伝導性と優れた電気的特性を提供する。パワー半導体では、シリコンチップを銅基板に直接実装するためにも使用する。接着剤ペーストは純金属ではなく、機能性を高めるのための樹脂や溶剤、添加剤が含まれる。スパッタリングターゲットは、電極などの薄膜を形成するための前工程で使用する。これらは、金やプラチナ、パラジウムなどの貴金属、場合によってはその他の特殊合金金属から作られる」と説明している。

材料メーカーがインドに熱視線

 「インド半導体ミッション(India Semiconductor Mission)」は現在、OSATでの機会を狙っている、数多くの世界的な先端材料サプライヤーの注目を集めている。

 インドの製造業はまだ初期段階にある。田中貴金属工業や米国のIndium Corporationなどの企業は、半導体パッケージングおよび製造工場が生産を開始すれば、ボンディングワイヤやはんだペースト、銀接着剤の需要が急増すると見込んで、存在感を高めている。

 既にインド・チェンナイでハイエンドはんだペーストを製造する工場を運営しているIndium Corporationは、インドの勢いが高まっていることも実感しているという。Indium CorporationのCEOを務めるRoss Berntson氏は「チェンナイに工場を構えたことを誇りに思っており、エレクトロニクス業界の未来は、プリント基板の組み立てと半導体パッケージング共に、非常に明るいと考えている。ここに拠点が必要だった直接的な理由は、はんだペーストが傷みやすいという物流の観点によるものだ。長期的な理由は、インドが需要だけでなくイノベーションの拠点になると確信しているからだ」と述べている。

 世界のボンディングワイヤ市場で30%以上のシェアを誇る田中貴金属工業は「インドは確実に当社のロードマップ上にある」と述べている。同社のインド子会社のマネージングディレクターを務める伊藤裕氏は「当社の完全なエコシステムをインドに展開する機会を見いだしている。貴金属は高機能材料だが、有限であるため、電子廃棄物やスクラップから新たな材料にリサイクルする必要がある。このクローズドループオペレーションは当社の事業基盤であり、インドには大きなビジネスチャンスがあると確信している」と述べている。

 同社は2020年にムンバイにインド子会社として田中貴金属(インド)を設立し、当初は自動車分野へのサービスに注力していたが、次の成長ドライバーとして半導体パッケージングに期待している。伊藤氏は「2026〜2030年に、ほとんどのOSATが機能的な工場を保有し、生産能力が倍増する可能性が高い」と付け加えた。

 Indium Corporationは、特殊用途に向けて顧客と共同開発した合金やフラックスに注力している。Berntson氏は「当社の独自性は、製品だけでなく、市場投入の方法にもある。当社の製品のほとんどは、実際に問題を抱えている顧客と協力して開発している。その課題が解決されれば、そのソリューションは同じ課題に直面している他の多くの企業にも採用される」と述べている。

 Indium Corporationの「Durafuse LT」はんだは、そうした製品の1つだ。当初は低温組立用に開発されたが、「現在は、AIパッケージングや通信分野にも応用されている」という。Berntson氏は「eモビリティや熱管理分野でも大きなチャンスがあると考えている」と述べている。

 両社は組み立ての先を見据えて体制を構築している。田中貴金属工業は、炭化ケイ素(SiC)用パッケージング用途を含む、ループの高さや強度が異なる29種類のボンディングワイヤを供給している。銅リードフレームに適した接着特性を有する銀ペーストも提供している。一方、Indium Corporationは、eモビリティと熱管理分野の需要に備え、インドの大学と連携して技術ノウハウの構築を進めている。

 伊藤氏は、特にリサイクル主導の精製施設の設立においてインフラ面での課題が残っていることを認めつつも、OSATや半導体工場を通じて先進材料を展開することでインド市場を席巻できるとの楽観的な見解を示している。「生産能力を維持するには、安定した電力と純水が不可欠だ」(同氏)

 Indium Corporationは既に、インドの拠点を製造を超えて研究開発に拡張することを検討している。Berntson氏は、「将来的には、ここに研究開発チームが置くことも考えている。私が重要な要素の1つだと考えていることは、協力に対する意欲だ。ここの顧客は、当社と共に課題を乗り越え、改善を重ねる準備ができている」と語った

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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