チップサイズも夢じゃない? NTTが世界を狙う「光量子コンピュータ」:OptQCと連結協定(2/2 ページ)
NTTは2025年11月19〜21日、25〜26日にかけて、最新のR&D関連の取り組みを紹介する「NTT R&Dフォーラム2025」を開催した。18日に開催されたメディア向け発表会では、OptQCと光量子コンピュータの実現に向けた連結協定を発表。2030年までに、世界トップクラスの100万量子ビット実現を目指すとした。
常温常圧で動作 小型化の可能性も期待
発表会では、NTT執行役員で研究企画部門長の木下真吾氏が光量子コンピュータについて解説した。あくまでイメージではあるが、光量子から量子もつれを生成し、もつれた量子を集めたクラスタにプログラミングを実施。プログラミングされたクラスタの情報を測定する、というのが、光量子コンピュータの基本動作だという。
光量子コンピュータの大きな特長の1つが、常温常圧で動作することだ。例えば超伝導方式の量子コンピュータは、極低温かつ真空が動作条件になるため、巨大な冷却装置などを用意する必要がある。一方、光量子コンピュータは量子光源やミラー、ファイバーなどの光学装置で構成され、シビアな動作環境を必要としないうえ、将来的にチップサイズに小型化できる可能性もある。
木下氏は「光量子コンピュータは、省スペースで量子ビット数を増やせる点も特長だ」とする。例えば1000量子ビットを生成する場合、超伝導方式などは、100量子ビットを生成可能なコンピュータを10台、並列的に動作させることで生成する。これを「空間多重方式」と呼ぶが、冷却装置などの小型化が難しく、異なるコンピュータから生成された量子ビット同士を、もつれ状態で維持するための機構も必要になるので、システム全体の小型化が課題になるという。
一方、光量子コンピュータは、時間的に連続的な量子もつれ状態を作り出す「時間多重方式」を採用する。本方式は単一のコンピュータで量子ビット数を増やすことが可能で、動作周波数の向上や、複数波長を重ねることでさらなる高性能化を実現できるという。
さらに木下氏は「光量子コンピュータは、光通信技術との親和性が高い」と語る。「光通信の光源技術や波長変換技術、低損失光ファイバー、マルチコアファイバー、光高速検出器など、さまざまな技術が、そのまま光量子コンピュータに活用できる。他の技術も少し改造するだけで利用できたりと、高いポテンシャルを感じている」とした。
将来的には「1億量子ビット」実現へ
将来的な構想として「光量子コンピュータも1台では性能に限界がある。いずれは光量子コンピュータ同士をIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(IOWN APN)と全光量子中継技術で接続し、世界規模の光量子通信ネットワークを構築したい」(木下氏)と語る。
「NTTとOptQCが目指す100万量子ビットの量子コンピュータでは、10兆×1兆年かかる計算が4日で完了すると考えられる。その先の1億量子ビット実現も目指して、OptQCと夢を共有しながら進めていきたい」(木下氏)
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