2026年半導体市場、成長は視野に入るが不確実性も残る ―― WSTS秋季予測をどう読むか:大山聡の業界スコープ(95)(2/3 ページ)
WSTSが2025年、2026年の半導体市場予測を更新し、2025年は前年比22.5%増、2026年は同26.3%増とした。AI投資が市場を押し上げる一方、PC/スマホなど主要アプリケーションの回復が遅れれば下振れの可能性もある。分野別の実績と背景要因から、予測の妥当性と今後のリスクを考察する。
アナログIC:電源関連を中心に復調局面が続く
ICはアナログ、マイクロ、ロジック、メモリに類別される。
2025年アナログ市場は前年比7.5%増という予測。前回予測では同2.6%増で、ここからは上方修正されている。2025年1〜10月までの実績を見ると前年同期比8.1%増、ここからやや悪化する予測になっている。直近3カ月(2025年8〜10月)では前年同期比10%を超える成長が続いているので、年間では前年比8〜10%増の成長を見込めるだろう。2021年、2022年と仮需が膨らみすぎた反動で、2023年、2024年とマイナス成長が続いた。だが、中長期的には毎年10%近い安定成長が期待できる市場である。特に昨今では電源関連のアナログIC需要が増える傾向にあるので、当面はポジティブな状況が続くだろう。2026年の予測は2025年比7.5%増となっているが、筆者としては10%程度の成長が見込める、と予測している。
マイクロ:サーバ向けMPUと車載MCUが鍵
マイクロ市場の2025年成長率は前年比7.9%増という予測。前回予測では同1.0%減で、ここからは上方修正されている。2025年1〜10月実績を見ると前年同期比7.5%増であり、おおむねこのまま推移する予測となっている。直近3カ月(2025年8〜10月)では前年同期比10%を超える成長が続いているので、年間では予測を上振れる可能性があるだろう。マイクロ市場の過半を占めているMPU市場は、出荷数量はあまり伸びていないが、単価が上昇傾向にある。これはサーバ向けの出荷比率が増えていることを示唆している。一方のMCU市場は、単価は横ばいで推移しているが、出荷数量が2025年後半から徐々に増え始めている。車載MCUの需要が回復していることが主な要因だろう。
2026年の予測は2025年比13.9%増となっている。これを達成するにはMPUが同15%程度、MCUが同10%程度の成長が必要になる。いずれも到達可能な数字ではあるが、かなり上限値に近いのではないか。筆者としては、同10%程度が妥当ではないかと考えている。
ロジック:NVIDIAが牽引、異例の高成長が続く
2025年のロジック市場は前年比37.1%増という予測である。前回予測では同11.7%増で、ここからは上方修正されている。2025年1〜10月実績を見ると前年同期比38.1%増と極めて好調に推移しており、ここから若干成長率が鈍化する予測となっている。直近の2025年8〜10月はいずれも前年同期比40%前後の伸びを記録しており、年間では予測を上回る可能性が高い。この市場の伸びを支えているのはNVIDIAである。同社の2025年8〜10月期決算をみると、売上高が570億米ドル、前年同期比で62.5%増という脅威的な伸びである。
ちなみに2025年8〜10月期の世界ロジックIC市場の出荷合計額は829億米ドル。仮にNVIDIAの売上高がすべてロジックICで構成されていれば、同社の売上高は世界ロジックIC市場の69%を占めることになる。もちろん、同社の売上高にはロジック以外の半導体やソフトウェアなども含まれるが、少なく見積もっても売上高の8割はロジックICで占められている、と筆者は推定している。この場合、世界ロジックIC市場は55%がNVIDIAによって占められている計算になる。その55%が年率6割を超える成長率で推移すれば、ロジックIC市場が40%伸びても何の不思議もない。同社の2025年11月〜2026年1月期の売り上げ計画は650億米ドル、前年同期比65%増という見込みである。そろそろピークが近いのでは、などという声も聞かれるが、NVIDIAの受注残は5000億米ドル前後、という推測もある。そうであれば、まだまだピークが見えるような段階ではないだろう。
2026年の予測は2025年比32.1%増になっているが、NVIDIAの勢いを考えれば、これを上回る可能性が十分にあるだろう。
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