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RISC-Vが自動車やHPCに本格進出 中国の「技術的自立」にも貢献アカデミアから産業界へ(3/3 ページ)

アカデミアで生まれたRISC-Vは現在、AIや高性能コンピューティング(HPC)、自動車をターゲットにする産業用命令セットアーキテクチャへと進化している。特に中国やインドが技術主権の確立に向けた政府支援を背景に導入を加速している一方、欧州では投資の分散と技術者不足によってビジネス化が課題に直面している。

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ビジネス化に苦戦の欧州 投資分散と技術者不足が課題

 アジアが政府主導によって迅速にRISC-Vを展開しているのに対し、欧州は研究力をビジネスにつなげるにあたって問題に直面している。欧州では、BSCのような機関がHPC関連の研究をリードしているにもかかわらず、投資が分散していて、専門技術者の数も不十分だ。

 Cervero氏は、2026年1月26〜28日にポーランドのクラクフで開催されたカンファレンス「HiPEAC 2026」において、こうした乖離について「欧州の専門技術者は決して多くはない。そこを改善する必要がある」と強調した。欧州の戦略は、European Processor Initiative(EPI)のような官民連携に大きく依存しているが、業界観測筋は「米国や中国と比べると資金調達の面でギャップが存在する」と指摘する。

 Gallo氏は「このようなギャップを縮めるためには、世界的な連携が重要な鍵になる」と強調し、スウェーデンで開催された業界イベントの後に設立された、宇宙/航空電子工学分野の新しい利益団体について言及している。

 それでも欧州は、新しい技術を大規模導入することには慎重だ。業界専門家は「欧州は技術的自立について『なくてはならないもの』ではなく『あるとより良いもの』と考える場合がある」と述べる。

 このような課題はあるが、欧州の研究者たちは、AIによって半導体設計へのアクセスを向上させている。Cervero氏は、欧州で専門技術者が不足する分野であるハードウェア設計へのアクセスを拡大する上で、大規模言語モデル(LLM)を活用することを提唱する。同氏は「われわれは、参入障壁を下げ、技術者が細部を恐れずに済むようにしたい」と述べながらも、「AIはあくまで補助ツールの1つであって、人間による監督を完全に置き換えることはできない」と警告する。

セーフティクリティカルな分野にも展開

 RISC-Vが、x86やArmのような実績あるアーキテクチャと競争するためには、オープン性だけでなく安定性も提供する必要がある。Gallo氏は今回、RISC-V InternationalがISO/IEC JTC 1 PAS Submitter(ISO/IEC第1合同技術委員会公開仕様書提出者)として認定されたという、重要な最新情報を共有した。

 RISC-V Internationalはこの新たな地位により、国際標準として採決/認証を受けるために仕様を提出できるようになる。このためRISC-V開発企業は、自動車や産業制御などの規制業界にもアクセスできるようになる見込みだ。

 Gallo氏は、「われわれは今や参加を認められ、RISC-V ISAを提出して評価を受けられるようになった。うまくいけば、ISO規格になる可能性もある」と説明する。このような動きは、信頼性と安全性の認証が最重要視される自動車分野への展開を推進するRISC-Vの取り組みにも合致している。また同氏は、Infineon Technologiesが議長を務める自動車関連の特殊利益団体が設立されたことについて、「RISC-Vをセーフティクリティカルなシステムに統合する上で、業界の準備が整っていることを示す動きだといえる」と強調した。

 RISC-Vの焦点は、もはや潜在的な可能性ではなく、実際のインフラ整備だ。Gallo氏は「企業がカスタマイズできる強力な検証済みプラットフォームを提供する計画だ」と述べた。欧州のHPCからインドのローカルチップ、そして中国の大規模AIまで、RISC-Vは世界の半導体産業の重要な部分になりつつある。

【翻訳:青山麻由子/田中留美、編集:EE Times Japan】

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