「サービスロボットの浸透」 なぜ米国は待ち望むのか:「CES 2026」で読み解く――サービスロボットの分水嶺(1)(2/2 ページ)
「CES 2026」の主役は、ヒューマノイドロボットをはじめ、ありとあらゆる“働くロボット”だったと言っても過言ではない。本連載では、今回のCESで展示されたロボットを振り返りながら、「サービス産業の現場」という視点で、米国でサービスロボットの導入が進む背景や、日本がサービスロボット分野で取るべき戦略について考察する。
なぜ米国ではロボットが歓迎されるのか
展示会場を歩きながら、一つの疑問が浮かんだ。日本でも同様の技術は存在するのに、なぜ米国ではこれほどロボット導入が進んでいるのか。現地で話を聞く中で、いくつかの要因が見えてきた。
完璧主義ではない導入姿勢
まず、導入に対する考え方が根本的に異なる。「できないところは仕方ない」「人で補えばいい」という割り切りがある。日本では「100%完璧に動かないと導入できない」という声をよく聞くが、米国では70〜80%の完成度でも「まずは使ってみよう」という姿勢が強い。この差が、導入スピードに大きく影響している。
慢性的な人手不足とインフレ(賃金上昇)
移民政策の変化とインフレはサービス業の人材確保が年々厳しくしている。歴史的に見ても、米国は、インフレによる賃金上昇とストライキが起こる度に、テクノロジーによる人員効率化を促すというパターンを繰り返してきた。最低賃金の上昇は、企業にとってロボット導入のROIを計算しやすくする。「時給20ドルの従業員を雇うより、ロボットをリースした方が安い」という判断が成り立つ場面が増えているのだ。
ジョブ型雇用の影響
日本のメンバーシップ型雇用では、客室係から宴会担当、レストラン担当へと配置転換することで、雇用を維持できる。しかし米国のジョブ型雇用では、特定の職務がAIやロボットに置き換われば、そのポジションは消滅する。皮肉なことに、この仕組みが企業のロボット導入へのハードルを下げている。従業員の配置転換を考慮する必要がないからだ。
専業ロボットから万能ヒューマノイドへ
今回紹介した「特定タスク向けロボット」は、着実に進化し、人手が少なくてもサービスを提供可能にするソリューションとして確立しつつある。配膳、清掃、搬送といった単一タスクを黙々とこなすロボットたちは、既にROIが見えやすい領域で導入が進んでいる。
では、CESで最も注目を集めた「ヒューマノイドロボット」はどうか。人間のように二足歩行し、腕を使い、さまざまなタスクをこなす汎用型ロボットは、いつ現実のものになるのか。
第2回では、ヒューマノイドロボットの現状と限界、そしてそれを支える要素技術について掘り下げていく。会場で見た華やかなデモンストレーションの裏側で、何が起きているのか。「AIはまだ使えない」という現場の声も含め、リアルな状況をレポートする。
著者プロフィール 神村優介(かみむら・ゆうすけ)
シェイプウィン株式会社代表取締役。徳山高専卒業後、セガトイズにて企画・マーケティングを担当。2011年にPRマーケティング会社、シェイプウィン株式会社を創業。スタートアップや成長企業を中心に、事業フェーズに応じたPR・マーケティング支援を行ってきた。
2020年から海外へビジネスを展開し、現在は世界14ヵ国・250社以上の企業に対し、日米市場向けのPRマーケティングを支援している。現在は、カナダ・バンクーバーを拠点に活動し、北米の生活者視点や市場動向を踏まえ、テックやマーケティング分野を中心に、国内外メディアへの寄稿・解説も多数。
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