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AI/HPCシステムの死命を制する消費電力・放熱設計(後編)福田昭のデバイス通信(512) TSMCが解説する最新のパッケージング技術(9)(1/2 ページ)

「IEDM 2025」におけるTSMCの講演内容を紹介するシリーズ。前編に続き、「(3)Thermal dissipation design(消費電力および放熱の設計)」の内容を解説する。

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(ご注意)今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを強く推奨します。

熱伝導材料(TIM)と冷却方式の改良でTDPを高める

 前編(前回)では、STCO(システムと製造の協調最適化)で考慮すべき5つの事柄の3番目である「(3)Thermal dissipation design(消費電力および放熱の設計)」の概要説明を始めた。AI/HPCプロセッサの最大消費電力(TDP)が最近になって急激に増加していること、プロセッサやメモリなどを収容する先進パッケージ各部の熱抵抗がTDPを制限すること、などを述べた。

 熱抵抗を大きく左右するのは、熱伝導材料(TIM:Thermal Interface Material)と冷却手法(放熱手法)である。TIMの熱抵抗(平方ミリ・℃/W)は材料によって大幅に異なる。ポリマーだとTIMの熱抵抗は10〜50とかなり大きい。薄膜化すると10以下、金属だと5以下と大幅に低くなる。ただしTIMの接続相手は表面が平坦ではなく、接続界面での熱抵抗が重要である。

 冷却方法では、従来式の強制空冷が一般的であり、コストが低い。ただし熱抵抗はあまり低くない。熱抵抗を下げた改良版の強制空冷、さらには液体冷却がハイエンドのシステムで採用されつつある。


パッケージの熱抵抗(縦軸、シリコンダイのpn接合からパッケージのケースまで)とシステムの熱抵抗(横軸、パッケージのケースから周囲環境まで)[クリックで拡大] 出所:TSMC(IEDM 2025のショートコース(番号SC1-5)で公表された講演スライドから)

パッケージの寸法拡大でパッケージの反り量が増加

 本シリーズの第4回「インターポーザに複数のシリコンダイを近接して並べる2.5次元集積化」でご説明したように、中間基板(インターポーザ)を採用する先進パッケージの寸法は拡大を続けている。その結果、2つの問題が生じた。

 1つは消費電力の増加である。このことは前編で述べた。もう1つはパッケージの反り量が大きくなることだ。反りを抑えるために、パッケージの外装をリングからリッドへと変更しつつある。この変更は、熱設計に影響する。

パッケージの寸法(横軸)と消費電力および温度(縦軸、左図)、パッケージの反り量(縦軸、右図)
パッケージの寸法(横軸)と消費電力および温度(縦軸、左図)、パッケージの反り量(縦軸、右図)[クリックで拡大] 出所:TSMC(IEDM 2025のショートコース(番号SC1-5)で公表された講演スライドから)

リングからリッドへの変更で放熱設計も変更へ

 外装をリング(Ring)からリッド(Lid)に変更すると、一般的には放熱性能が低下する。リングの場合はヒートシンクとシリコンダイ(発熱源)を、1枚のTIM材料を介して接続する。リッドになるとシリコンダイとリッドを接続するTIMに加え、リッドとヒートシンクを接続するTIMが必要となる。TIMが2枚に増える。このため、原理的には熱抵抗が上昇する。言い換えると、許容可能な最大消費電力(TDP)が低下する。

 そこで対策として、シリコンダイ全体から熱を均一に逃がすのではなく、発熱量の多い局所的な領域(ホットスポット)からの熱抵抗が低くなるように、TIMを改良する。こうすると外装がリッドでも、許容電力をリング外装よりも上げられる。

パッケージ(外装)とヒートシンクの協調最適化
パッケージ(外装)とヒートシンクの協調最適化。左は均一な放熱経路でリングとリッドの許容電力を比較したもの。右は局所的な放熱経路でリングとリッドの許容電力を比較したもの。いずれもシリコンダイ(SoC)の接合温度は最大100℃[クリックで拡大] 出所:TSMC(IEDM 2025のショートコース(番号SC1-5)で公表された講演スライドから)

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