パワー半導体3社連合とデンソー提携のアナログ「両軸を強化」 ローム社長:統合協議で見えてきた課題にも言及
ローム社長の東克己氏は2026年5月12日、「デンソーとの提携によるアナログ、東芝デバイスアンドストレージ(D&S)および三菱電機との取り組みによるパワー、この両輪を強化することでソリューション提供力を高め企業価値の最大化を目指していく」などと述べた。
ローム社長の東克己氏は2026年5月12日、買収提案を取り下げたデンソーとの連携や、東芝および三菱電機とのパワー半導体事業統合協議に関して言及。「デンソーとの提携によるアナログ、東芝デバイスアンドストレージ(D&S)および三菱電機との取り組みによるパワー、この両輪を強化することでソリューション提供力を高め企業価値の最大化を目指していく」などと述べた。
パワー半導体とアナログ、「技術の一体化が不可欠」
この日、ロームが開催した決算説明会において言及した。デンソーについては「提案の取り下げを受けて、当社としても一連の検討は終了した」としつつ、両社の技術や製造面の強みを組み合わせた共創には引き続き意義がある、と説明。「今後は資本関係の在り方に限定されることなく、従来の戦略的パートナーシップに基づき、アナログICを中心とした協業や人的交流を進め、自動車に加え民生や産業機器といった幅広い分野での顧客への価値提供の向上を図っていく」などと述べた。
一方で、東芝D&Sおよび三菱電機とのパワー半導体事業統合に関する協議については、「現在も協議中であり、守秘義務の関係から詳細は伝えられない」としつつ、「われわれの目指しているのは日本のパワーデバイス産業として強い連合を構築し、グローバル市場で持続的に競争力を発揮できる体制の確立だ。規模の拡大だけではなく、技術力、供給力、事業基盤の確保において実効性のある強化を図ることが重要と考えている」と強調した。
さらに東氏は3社統合について「関係者が増えることで、意思決定のスピードや実効力への影響についての懸念があることも十分認識している。『船頭多くして船山に上る』というような状況を回避するため、3社が互いに和と尊敬を持って協力し、それぞれの強みを最大限に発揮できる役割分担や体制の在り方について、丁寧にかつ真摯に協議を進めている。半導体を取り巻く環境変化は非常に早く、意思決定と実行のスピードが企業価値を大きく左右することを踏まえ、必要な検討を推し進め、スピード感を持って方向性を示していくことを重視している」なども述べた。
またデンソーとの連携および3社連合の関係については「市場が求めるのは部品単体ではなく、効率、熱、小型化、信頼性といったシステム全体の価値であり、その実現にはパワー半導体とアナログ制御、技術の一体化が不可欠だ。デンソーとの提携によるアナログ、東芝D&Sおよび三菱電機との取り組みによるパワー、この両輪を強化することでソリューション提供力を高め企業価値の最大化を目指していく」と説明していた。
パワー半導体統合「何らかの形で切り分けて検討」
なお、東芝D&Sとロームの統合は半導体事業全体が対象だが、三菱電機を加えた3社の連合については、それぞれのパワー半導体事業が対象となる。ロームは「統合の形については協議中であり、まだ確定したものはない。ただ基本的には3社のパワー半導体事業が対象になるため、何らかの形で切り分けて検討することになるだろう」としている。
東氏は2025年3月の発表時、2026年夏をめどに、まず東芝との事業統合の方針を示すと説明していた。今回の会見でその進捗を問われると、「各社、切り出す事業や工場などについて、それぞれの思いがある。なるべくスローダウンさせないようにしているが、協議の前と比べると、発言は慎重になる」などと答えた。また、ロームには1つの工場でパワーデバイスだけでなく、小信号ディスクリートやアナログICなども製造する拠点が多いことを挙げ、「その切り離しというのは、なかなかうまくいかない。(統合の形態が決まるには)当初想定より時間はかかるだろう」などと述べた。
東氏はこうした統合における課題として、開発面についても触れた。「ファストリカバリーダイオード(FRD)を例に挙げれば、パワー用も小信号用も同じ技術者が開発している場合がある。そうした切り分けは、時間をかけてでもしっかりしておかなければならない」などと説明した。
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