HDDは「相当攻めている」 WD高野氏が語る100TB時代の技術戦略:WD ジャパン カントリーオフィサー 高野公史氏(2/2 ページ)
AIの普及でデータのトラフィックが急速に増加する中、ストレージとしてHDDの存在感が増している。Western Digital(WD)ジャパンカントリーオフィサーの高野公史氏に、強みやWDの戦略を聞いた。
日米に開発拠点を持つ強み
――HDD大手として、WDの強みをあらためてお聞かせください。
高野氏 HDDの主要ベンダー3社の中で、日米の両方に開発拠点を所有しているのは当社だけだ。その強みを最大限に生かしていく。デュアルピボット技術が良い例だが、われわれの日本の拠点において革新的な技術を日々生み出し、実用化してきたという実績がある。
日本の拠点では、開発だけでなく製造プロセスを手掛けるチームも在籍している。同チームが開発した量産プラットフォームによって、WDのタイ工場では生産ラインが完全に自動化され、照明がなくても稼働できるダークファクトリー(Lights-out factory)として、膨大な数のHDDが生産されている。HDDの開発チームと製造プロセスチームが同じ敷地内にいるので、開発時から量産プロセスも考慮できる。これは開発効率の点で非常に大きい。
日本にはHDDのサプライヤーが数多く存在する上に、磁気材料やスピントロニクス技術の研究に定評がある機関も多い。製造プロセスの向上に必要なロボティクス領域も強い。日本に拠点があるということは、こうした分野の研究機関やメーカーと積極的に連携し、新しい技術を開発していけるということだ。
HDDは「相当攻めた技術」で今後も進化
――HDDはどうしても「SSDに対する競争力」という話になりがちですが、HDD自体が進化し続けていますね。
高野氏 確かにパフォーマンスについてはSSDとギャップがあったが、広帯域ドライブやデュアルピボットなどの新しい技術によって、そのギャップも狭まる方向で進化している。
HDDの強みであるコストを抑えたままで、性能向上を実現できているのも大きなポイントだ。AIの急速な普及により、特に推論の領域で高速なデータ転送が要求されている。ハイパースケーラーがコストを抑えつつそうした要求に応えるためには、HDDの高性能化が欠かせない。われわれは、スピントロニクス技術などの新しい技術を活用した高性能かつ低消費電力のHDDを市場に投入する計画だ。2年以内に、何らかの発表ができると考えている。
――高野さんはePMR技術を開発したお1人ですよね。
高野氏 これほど長くePMRが長く使われるとは思っていなかった。物理的な限界がかなり先だというのは、シミュレーションやモデリングで分かっていたが、ディスクと磁気ヘッド間のスペースを極限まで詰めなければ性能のポテンシャルを引き出せないので、それを実現できるのかと思っていた時期はあった。
現在は、TFC(Thermal Flying-height Control)などヘッド浮上量を制御する技術が著しく進化するなど、HDD関連技術は相当攻めたものになっていると確信している。こうした“攻めた技術”の開発を続けていることに加え、HAMRを採用することで100TBのような大容量HDDの世界を実現できるようになってきた。
ePMR技術は長く使われているが、磁気メディアの材料は随分変わった。現在は鉄白金(FePt)材料を用いているが、結晶粒径に限界が見え始めているので、記録密度を上げるためにより粒径を小さくできる材料の開発なども必要になってくる。
「HDD命」の技術者 まだまだ多い日本
――高野さんは、データストレージの業界団体であるIDEMA JAPAN(日本HDD協会)の会長も務めています。
高野氏 IDEMAは米国で設立され、その後IDEMA JAPANが立ち上げられた。2000年代、HDD市場が低迷していた時期に米国のIDEMAは解散してしまったが、日本では活発な活動が続いている。Seagate Technologyが再加入するほどだ。現在は60社以上が参画している。
日本ではHDDのサプライヤーがそれだけ多いということだ。日本には今なお、「HDD命」のような技術者が数多く存在する。HDD市場が低迷していた時期も、IDEMA JAPANでは次世代技術に向けたセミナー開催やアカデミア支援を地道に継続してきた。AIにけん引され、HDDは今後も力強く進化していくだろう。
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