京都大、半値幅5.5nmの超狭帯域発光を示す有機材料を開発:より高精細なディスプレイ開発へ
京都大学は、半値幅が5.5nmという極めて狭い発光を示す有機材料の開発に成功した。今回の成果は、より高精細なディスプレイの開発につながるとみられる。
多重共鳴の基本単位を複数連結し、励起子を分子全体にわたり非局在化
京都大学大学院理学研究科の畠山琢次教授と儘田正史准教授、越智純毅助教、片岡宏太修士課程学生(当時)、Lee Taehwan博士課程学生らによる研究グループは2026年6月、半値幅が5.5nmという極めて狭い発光を示す有機材料の開発に成功したと発表した。今回の成果は、より高精細なディスプレイの開発につながるとみられる。
畠山教授らは、分子設計に関する新たな指針を2016年に見いだしていた。これを機に狭帯域発光を示す材料の開発が大きく進展。近年は、多重共鳴(MR)効果を利用した分子設計により、半値幅が20nm程度の発光を示す材料も開発されてきたが、スペクトル幅のさらなる狭帯域化が求められているという。
そこで今回、MRの基本ユニットを複数連結することで、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)の空間的分離領域を拡張し、MR効果を維持しながら励起子を非局在化させる分子設計指針を提案。新規分子の発光特性を詳細に評価することで、その有効性を実証した。
今回開発した分子「m-CzB10-Mes」は、ラダー型中分子でナノカーボンに属するという。今回は独自開発したワンショットホウ素化法を用いることで、目的とする位置に99%以上の収率でホウ素原子を導入でき、10個のホウ素原子を有するヘテロナノカーボン分子を効率よく合成することに成功した。
m-CzB10-Mesを用いることで、発光半値幅の大幅な低減や発光量子収率の向上、熱活性化遅延蛍光(TADF)の高速化などを同時に達成することが可能となった。特に、発光半値幅はトルエン中で6.9nm、低極性溶媒中だと5.5nmに達した。
TADF特性についても、m-CzB10-Mesは遅延蛍光寿命が1マイクロ秒以下で、既存のD-A型材料に匹敵する性能を実現。狭帯域発光と高速TADF過程を両立させることに成功した。
今回は溶液中で半値幅5nmに迫る発光を達成した。ただ、固体薄膜中ではスペクトルがわずかに広がり、OLED素子中では約10nmにとどまった。今後の重要な課題として研究グループは、固体状態における分子配列や分子間相互作用の制御を挙げている。
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