AMDがメモリ最適化技術の新興を買収 「メモリの壁」を打破できるか:ソフトも含めたフルスタックAI企業に(2/2 ページ)
AMDは2026年6月、予測型メモリ技術に特化したスタートアップのMEXTの買収を発表した。同技術はNANDフラッシュメモリをDRAMのように動作させ、性能を犠牲にせずにコストを削減し、利用可能な容量を拡大するものだ。
フラッシュメモリの経済性とDRAM級の性能を両立
MEXTは、低コストなフラッシュストレージをサポートするためのAI駆動型ソフトウェアを開発している。同社のメモリ最適化技術は、AI駆動型の予測型メモリでNANDフラッシュメモリをDRAMのように動作させ、性能を犠牲にせずにインフラコストを削減し、利用可能なメモリ容量を拡大できるという。
このメモリ階層化技術は、NANDフラッシュメモリを、OSに対してどうやってDRAMのように見せているのだろうか。この技術は3つの手順で動作し、フラッシュメモリレベルの経済性および容量とDRAMクラスの性能を両立させる。
第1に、MEXTは、積極的に利用されていないコールドメモリページを特定し、それをフラッシュにオフロードする。そのコストは、DRAMの50分の1だ。
第2に、MEXTのAI搭載エンジンが、オフロードされたメモリページのうち、アプリケーションによって直近でリクエストされる可能性が高いものを予測する。メモリへのアクセスパターンを継続的に分析し、AIモデルを利用して、フラッシュメモリに保存されているデータの中でどれが次に必要になるかを予測するのだ。
第3に、AIエンジンは、これらのページが必要になる前に積極的にDRAMへ押し戻す。このため、関連するメモリページは全て常にDRAMの中で検索可能で、性能が維持される。その結果、アプリケーション性能を損なわずに、DRAMフットプリントを大幅に削減し、コストを大きく抑制できる。
NVIDIAに対抗できる「フルスタックAI企業」へ
AMDによるMEXTの買収は、まず、「現代のコンピューティングにおける最も厄介なボトルネックの1つであるメモリ問題に取り組む」というAMDの姿勢を明らかにした。MEXTの予測型AIモデルは、CPU、GPU、広帯域メモリ(HBM)の間のデータ経路を最適化し、遅延を低減する。これによって、データセンター事業者はハードウェアへの投資を大きく増やすことなくメモリ容量を拡大できる。
AMDのアクセラレーター「MI300」「MI355X」はHBMに大きく依存しているので、メモリ利用効率の向上は消費電力当たりの性能向上に直結する。しかし、MEXTの予測型メモリ技術をAMDのCPUおよびAIアクセラレーターに統合するには、高い実行力が求められる。特に、AMDのAIシステムが大規模環境においてメモリ管理やデータ移動、ワークロードの挙動をどれだけ賢く制御できるかが成否を左右するだろう。
今回の買収はまた、AMDが従来のCPU/GPUベンダーから脱却し、ハードウェアだけでなくソフトウェアまで含めた「フルスタックAI企業」へと進化し、NVIDIAに対抗しようとする積極的な戦略の表れでもある。AMDは、NVIDIAの「CUDA」に対抗する形でソフトウェア基盤「ROCm」の強化を進めていて、MEXTのツールチェーンは、NVIDIAが築いた強力なCUDAエコシステムとの差を縮める一助となる可能性がある。また、AIアクセラレーター市場において、AMDがNVIDIAに対する有力なセカンドソースとしての地位を確立する後押しにもなり得る。
AMDによるMEXTの買収は、データセンター向けCPUやAIアクセラレーターにおける「メモリの壁」を打破しようとする業界全体の取り組みにおいて重要な節目となる。またAMDにとっても、AIシステム全体の設計をより包括的な視点で捉えるための重要な戦略的ステップだといえる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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