鉛フリーペロブスカイトで巨大光電流、理研ら 太陽電池への応用期待:環境調和型光電変換材料の開発加速
理化学研究所(理研)などの共同研究グループは、強誘電性を示す鉛フリーペロブスカイト薄膜で観測されるシフト電流応答が、可視光域で従来に比べ1桁以上も上回ることを確認した。鉛(Pb)を含まない環境調和型光電変換材料として太陽電池などへの応用が期待される。
符号反転や負のピークなどの特徴が第一原理計算とほぼ一致
理化学研究所(理研)などの共同研究グループは2026年6月、強誘電性を示す鉛フリーペロブスカイト薄膜で観測されるシフト電流応答が、可視光域で従来に比べ1桁以上も上回ることを確認したと発表した。鉛(Pb)を含まない環境調和型光電変換材料として太陽電池などへの応用が期待される。
ペロブスカイト太陽電池は、次世代太陽電池として期待されている。ただ、現状では環境負荷や人体への毒性が懸念されているPbを含む材料が用いられてきた。こうした中、Pbフリーで強誘電性に優れたゲルマニウム(Ge)系ハライドペロブスカイトが注目されている。強誘電体のように空間反転対称性が破れた物質では、シフト電流と呼ばれる大きな光電流が発生することから、新たな光電変換原理として期待されている。
研究グループはこれまで、ハライド薄膜の成長に適した分子線エピタキシー装置を開発してきた。今回は、この装置を用いてGe系ハライドペロブスカイトの1つであるヨウ化ゲルマニウムセシウム(CsGeI3)を成長させ、結晶方位が揃ったエピタキシャル薄膜の作製に成功した。
作製した薄膜試料に光を照射し、外部電圧を加えずに発生する光電流(無バイアス光電流)を測定した。光電流は、CsGeI3のバンドギャップに対応する約1.6eVから立ち上がり、2.9eV付近で「正」から「負」に符号が反転し、3.0eV付近では負のピークとなった。この符号反転はシフト電流の特徴的な振る舞いだという。
第一原理計算によって得られたシフト電流のスペクトルを実験結果と比較した結果、符号反転や負のピークといった特徴がほぼ一致した。これにより、実験で観測された光電流がシフト電流であることを実証した。また、薄膜に電場を加えて強誘電分極の向きを制御すると、電場の向きに応じて無バイアス光電流の大きさが可逆的に変化することも確認した。
さらに、CsGeI3薄膜で観測したシフト電流応答を従来の物質と比べたところ、可視光域における性能指数が、1桁以上も上回ることが判明した。
今回の成果は、理研創発物性科学研究センター強相関界面研究グループの三木孝馬研究生(現在は東京大学大学院工学系研究科大学院生)、中村優男上級研究員(現在は客員研究員、東北大学大学院理学研究科教授)、川崎雅司グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、創発光物性研究グループの小川直毅グループディレクター、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(東京大学卓越教授/東京大学国際高等研究所東京カレッジ)、最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部強相関材料環境デバイス研究チームの岡本敏チームディレクター(住友化学コーポレート研究業務部研究企画統括)らによるものである。
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