発光層を結晶化させた「薄膜結晶有機EL」を開発、富山大:アモルファスOLEDから結晶OLEDへ
富山大学の研究グループは、発光層を結晶化させる技術を用い、低電圧駆動と大電流密度を実現した「薄膜結晶有機EL」の開発に成功した。有機EL(OLED)分野において、これまでの「アモルファスOLED」から「結晶OLED」に切り替わる可能性があるとみている。
アモルファス素子に比べ電流密度は最大1000倍、駆動電圧は1.33V
富山大学学術研究部光学系の森本勝大教授、本田裕哉氏(大学院理工学研究科)、中茂樹教授らによる研究グループは2026年7月、発光層を結晶化させる技術を用い、低電圧駆動と大電流密度を実現した「薄膜結晶有機EL」の開発に成功したと発表した。有機EL(OLED)分野において、これまでの「アモルファスOLED」から「結晶OLED」に切り替わる可能性があるとみている。
現行のOLEDディスプレイは、アモルファス薄膜を真空蒸着する薄膜積層型有機EL技術がベースとなっている。ところが、アモルファス状態の有機薄膜は、分子の配列が乱れているため、材料が持つ本来の性能が得られなかったという。そこで注目されているのが、分子が規則正しく並んだ「有機単結晶」である。しかし、製造プロセスの観点から、実用的なデバイスに応用することが難しいとされてきた。
研究グループは今回、電荷移動度が高い有機半導体材料「ルブレン」に着目した。実験では、透明電極付きガラス基板上に、下地層としてガラス転移温度が低いアモルファス材料(α-NPD)を成膜。その上に膜厚50nmのルブレンを形成した。
そして独自の2段階熱処理プロセスで結晶薄膜を作製した。具体的には、ルブレンを成膜した後に、予熱を用い極めて微細な「結晶の種」を形成。デバイスが完成した後に、本熱処理として下地層の分子運動を利用し、ルブレン分子の結晶を穏やかに成長させた。
作製した試料を偏光顕微鏡で観察した。この結果、約1mmに達する結晶ドメインが、25mm基板全体に形成されていることが分かった。この結晶ルブレン薄膜を組み込んだ有機EL素子を作製し、その特性を評価したところ、従来のアモルファス素子に比べ、同じ電圧で最大1000倍の電流が流れた。電流が流れ始めたのは0.38Vで、ディスプレイの輝度が1cd/m2に達する電圧は1.33Vであった。しかも、結晶デバイスの発光は単一のピークを示すことが分かった。
研究グループは今後の課題として、発光変換効率の改善を挙げた。適切な発光材料(ドーパント)の導入などによって、これらの課題を解決していく予定である。
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