高効率EUV光発生法で露光装置の消費電力を低減:マルチレーザー照射法を適用
理化学研究所(理研)と宇都宮大学らによる国際共同研究グループは、波長2μmの固体レーザーとマルチレーザー照射法を組み合わせることで極端紫外線(EUV)光変換効率を40%も高めることに成功し、その有用性を実証した。EUV露光装置の省電力化につながるとみている。
複数のレーザーを同時に使用し、EUV光変換効率を向上
理化学研究所(理研)光量子工学研究センター未踏レーザー科学研究チームの高橋栄治チームディレクターと宇都宮大学工学部基盤工学科の東口武史教授らによる国際共同研究グループは2026年8月、波長2μmの固体レーザーとマルチレーザー照射法を組み合わせることで、極端紫外線(EUV)光変換効率を40%も高めることに成功し、その有用性を実証した。EUV露光装置の省電力化につながるとみている。
最先端の半導体デバイスは現在、波長13.5nmのEUV光を用いたEUV露光装置を使って製造されている。このEUV光源には現在、波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを用いスズ(Sn)プラズマを生成する方式が採用されている。ところが、こうしたEUV露光装置は1台当たりの消費電力が1MWに達していて、製造コストや環境負荷の面で課題となっている。
こうした中で注目されているのが、従来の炭酸ガスレーザーを、比較的低出力の波長2μm固体レーザーに置き換える方法である。そこで研究グループは、複数の2μm固体レーザーを同時に照射しSnプラズマを生成することで、レーザーからEUV光への変換効率を高める方法を試みた。
今回は、2μm固定レーザーを用いたEUV光発生に、高橋氏らが開発した「マルチレーザー照射法」を適用した。これにより、EUV光変換効率を2.6%から3.6%へ、約40%向上させることに成功した。1本当たりのレーザーエネルギーを低減させつつ、複数のレーザーをEUV光発生に同時利用することで、高いEUV光変換効率が維持できることを実証した。
実験では、単一レーザー照射条件において、EUV光変換効率が最大となるレーザー強度を調べた。そして、約1.6×1011W/cm2のレーザー集光条件において、2.6%の最大変換効率が得られることを確認した。
次に単一レーザー照射条件を基準に、複数レーザー照射下におけるEUV光発生特性を調べた。総レーザーエネルギー40mJを2本のレーザーに分岐し、各レーザー強度を最適値に保ちながら、Sn平板ターゲットに同時照射した。この結果、EUV光変換効率はSn平板ターゲットを用いた2μm固体レーザーEUV光源として最高レベルの3.6%に向上した。
さらに、EUV光のエネルギーを測定したところ、レーザーで加熱されるプラズマ領域が広がることで、プラズマの冷却が抑えられ、EUV光が多く放射されることが分かった。
EUVピンホールカメラによる観測では、EUV光源サイズは単一レーザー照射時と複数レーザー照射時のいずれも約60〜70μmとなった。つまり、複数レーザーを照射しても光源サイズに変化はなく、EUV光変換効率のみを向上させることができることを実証した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
水や体液に強い厚さ約200nmの透明導電膜を開発、理研ら
理化学研究所(理研)らによる国際共同研究グループは、湿った環境や水中でも安定して動作する「透明導電ナノ膜」を開発した。雨水や海水、体液などへの耐久性に優れていて、ウェアラブルデバイスや透明な脳表面電極などへの応用に期待する。
特定の向きに並んだCNT構造を局所的に形成する新技術
東京理科大学と産業技術総合研究所の研究グループは、大阪大学や理化学研究所らの研究グループと共同で、無配向カーボンナノチューブ(CNT)膜に対して、偏光制御された超短パルスレーザーを照射し、特定の向きに並んだCNT構造を局所的に形成する技術を新たに開発した。
新ポリマー半導体で有機薄膜太陽電池の性能向上、広島大ら
広島大学と京都大学、日本電子らの研究チームは、結晶性が低いポリマー半導体「PTNT2T」が、高い電荷移動度を示す起源を明らかにした。この材料を有機薄膜太陽電池(OPV)へ応用し、世界最高水準のエネルギー変換効率を実現した。
鉛フリーペロブスカイトで巨大光電流、理研ら 太陽電池への応用期待
理化学研究所(理研)などの共同研究グループは、強誘電性を示す鉛フリーペロブスカイト薄膜で観測されるシフト電流応答が、可視光域で従来に比べ1桁以上も上回ることを確認した。鉛(Pb)を含まない環境調和型光電変換材料として太陽電池などへの応用が期待される。
最高速のガラス微細貫通穴加工技術を開発、理研
理化学研究所(理研)とエンプラス研究所の研究グループは、GHzバーストモード超短パルスレーザーを用い、ガラスに超高アスペクト比で高品質の微細貫通穴を、超高速で形成するための技術を開発した。チップレットや3次元実装など先端半導体デバイス製造における基盤技術として期待される。
ソニーが「業界最速」X線CMOSイメージセンサー量産
ソニーセミコンダクタソリューションズが、理化学研究所と共同で「業界最速」(同社)の撮像と低ノイズ性能を両立するX線CMOSイメージセンサーを開発した。X線検査/計測機向けに商品化し、量産出荷を開始する。



