26年Q2の半導体世界ランキングから読み取る「本当の勝者」:湯之上隆のナノフォーカス(95)(4/4 ページ)
Semiconductor Intelligenceが2026年8月に発表した、世界半導体企業ランキング。筆者は、このランキングにTSMCや、急成長するメモリメーカーがいないことに強い違和感を覚えた。そこで、各社の決算資料を基にランキングを作り直してみたところ、ChatGPT登場から約4年で世界半導体産業の勢力図が根本から塗り替えられつつあるという、予想以上に劇的な光景が浮かび上がってきた。
4年間で誰が最も利益を増やしたのか
最後に図6を見てほしい。この図は、2022年5〜7月期から2026年5〜7月期にかけての営業利益の増加分が大きい企業順に並べたものである。
図6 主な半導体メーカーの2022年5〜7月期から2026年5〜7月期にかけての営業利益の増加分[クリックで拡大] 出所:各社の決算報告および一部筆者推計、各社のCYまたはFYの決算月の四半期営業利益から筆者計算
1位はNVIDIAの632.4億ドル増、2位はSamsungの515.3億ドル増、3位はSK hynixの370.3億ドル増、4位はMicronの301.8億ドル増、5位はTSMCの153.2億ドル増、6位はCXMTの103.1億ドル増、7位はBroadcomの91.9億ドル増だ。
以下、キオクシア(63.9億ドル増)、YMTC(58.4億ドル増)、Sandisk(44.5億ドル増)とメモリ企業が続き、Intelはわずか24.9億ドル増にとどまる。ルネサス エレクトロニクスやUMC、GlobalFoundries、Texas Instrumentsに至ってはマイナス、つまり4年前より利益が減っている。
ここで非常に重要なのは、図4に示した売上高成長の勝者と、図6に示した利益増加の勝者が、ほぼ重なることである。まずGPUのNVIDIA、AI半導体関連のファブレスとファウンドリー、そしてメモリ。つまりこれは偶然ではない。生成AIという巨大な需要爆発が、半導体産業の売上高と利益を、同じ方向へ再配分しているのである。
「半導体スーパーサイクル」という言葉では足りない
2026年の半導体市場が「スーパーサイクル」と呼ばれ始めている。しかし、それだけでは今回起きている現象の本質を捉えきれない。なぜなら、全ての半導体メーカーが同じように成長しているわけではないからだ。
ChatGPT登場前夜の2022年5〜7月期と2026年5〜7月期を比較すると、CXMTは約47倍、YMTCは約22倍、NVIDIAは約14倍に売上高を伸ばした。その一方で、Intelはほぼ横ばいであり、QualcommやMediaTekなどは2022年の水準を下回っている。
さらに営業利益を見ると、その格差はもっと大きい。つまり、この4年間に起きたことは、単なる「半導体市場の拡大」ではない。AIブームによって、世界半導体産業の成長と利益の源泉が根本から組み替えられたのである。
そしてもう一つ見逃せないのが、中国のCXMTとYMTCである。米国による厳しい半導体規制が続く中、この2社が売上高で世界トップ10内まで浮上してきたことは、今後の世界半導体産業を考える上で極めて大きな意味を持つ。
「世界8位のキオクシア」に感じた小さな違和感からランキングを作り直してみたら、そこにはAIブームと中国によって塗り替えられつつある、世界半導体産業の新しい勢力図が浮かび上がってきた。
この地殻変動は、まだ終わっていない。今後、AIデータセンターの巨額投資がどこまで続くのか、スーパーサイクルと言われ始めたメモリ市場の拡大がいつピークアウトするのか、そして中国メモリ2社が広帯域メモリHBMなど最先端領域にどこまで食い込んでくるのか。この3点が、将来の勢力図を決めることになるだろう。筆者は引き続き、各社の決算を定点観測していくつもりである。
(後記)
生成AIの登場によって、半導体市場が爆発的に成長し、その利益構造が再構築されたことが分かりました。では、半導体製造装置では、生成AI前後でどのような変化が起きているのでしょうか? この分析については、毎月2回配信しているメールマガジンにて分析と考察を行いました。詳細はこちらをご参照ください。
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年にわたり、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。2023年4月には『半導体有事』(文春新書)を上梓。
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