鉛フリー量子ドットで赤外センシング 印刷にも対応:スマホや生体センシングに
田中貴金属工業と名古屋大学は、近赤外領域の光に応答する「鉛フリー貴金属量子ドット材料」を共同開発した。鉛やカドミウムを含まず、印刷プロセスによる形成にも対応する。スマートフォンからバイオメディカルまで幅広い赤外センシング用途への応用が期待される。
スマートフォンからバイオメディカルまで幅広い分野に対応
田中貴金属工業は2026年10月、名古屋大学鳥本研究室との共同研究により、近赤外領域の光に応答する「鉛フリー貴金属量子ドット材料」を開発したと発表した。鉛やカドミウムを含まず、スマートフォンからバイオメディカルまで幅広い赤外センシング用途への応用が期待される。2027年1月よりサンプル品の提供を始める。
赤外光を用いたセンシング技術は、スマートフォンの顔認証機能や産業用検査カメラ、自動車用LiDAR、生体センシングなど、幅広い用途で利用されている。受光材料としては主にInGaAs(インジウムガリウムヒ素)が用いられている。高感度検出が可能な半面、製造工程が複雑で、量産時の歩留まりやコストに課題がある。原料となるインジウム(In)の安定供給も課題となっているという。
そこで注目されてきたのが硫化鉛(PbS)を用いた量子ドット材料(半導体ナノ粒子)の活用である。量子ドットは、粒子径を制御すれば光を吸収/発光する波長が調整できる。大面積化に適した印刷プロセスを適用でき、InGaAsを用いる場合に比べ約10分の1のコストでセンサーを製造できるとされる。ただ、PbSの大きな課題といえば「鉛」を含んでいることだ。
そこで、田中貴金属工業と名古屋大学は、貴金属を主成分とする化合物半導体量子ドット材料を開発した。開発した銀・硫黄・テルル(Ag-S-Te)量子ドットを、簡易的な光センサーの活性層(受光層)として実装し性能を評価した。この結果、波長1200〜1700nmの短波長赤外(SWIR)光に対し、最大18.4%という外部量子効率(EQE)が得られた。この波長帯は太陽光など外部の影響を受けにくく、屋外でも高い精度でセンシングが行えるという。人の目に対する安全性も高い。
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