ルネサス/インフィニオンがスタートアップに求めるものとは:フィジカルAIセッション
2026年10月21〜22日にかけて、スタートアップやイノベーション創出を支援するイベント「Japan Summit 2026」(Tokyo Innovation Base)が開催された。初日にはルネサス/インフィニオンによるセッション「Physical AIを支える半導体・エッジコンピューティングの現在地」が行われ、フィジカルAIに求められるものや、スタートアップへの要望などを語った。
2026年10月21〜22日にかけて、スタートアップやイノベーション創出を支援するイベント「Japan Summit 2026」(Tokyo Innovation Base)が開催された。初日の10月21日には、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)のAIプラットフォーム&テクノロジーバイスプレジデント(VP)を務めるMandali Khalesi氏と、インフィニオンテクノロジーズジャパン(以下、インフィニオン)のVPを務める後藤貴志氏によるセッション「Physical AIを支える半導体・エッジコンピューティングの現在地」が行われた。
Khalesi氏は半導体における演算やAI処理の領域を担当していることからAI開発基盤の観点で、後藤氏はパワー半導体やセンサー事業に携わっていたことから電力/センシングの観点で、フィジカルAIに求められるものやスタートアップへの要望などを語った。
フィジカルAIは「最悪の場合」を前提に設計
モデレーターから「フィジカルAIの台頭による半導体への要求の変化」を聞かれると、Khalesi氏は「実際のロボットは演算能力や電力が限られているうえ、過酷な環境で長年使われる。ソフトウェア上で開発したAIモデルを、現実のロボットですぐに使えることが求められるようになってきた。また、ロボットは複数のチップやシステムをいかに連動させ、効率的に動かせるかも重要だ。そういう意味で、半導体への要求も厳しくなっている」と述べる。
後藤氏は「従来のロボットとフィジカルAIの最大の違いは『自律駆動すること』だ。その結果、電力密度の高さや効率性、即応性、センサーの正確性が求められる。最も大事なのが安全性で、人間と一緒に働くことを想定する以上、これまでとは全く違う要求が生まれている」とする。
これに対し、Khalesi氏は「イノベーションと安全性はバッティングする」と続ける。「前職で自動運転システムの開発に携わっていたが、新しい技術と安全性の両立は難易度が高く、開発に時間もかかる。そのうえ自動車などのハードウェアは、一度世に出たら簡単に設計を変えられないため、アップデート可能なソフトウェア側で変更に対応しないといけない」(Khalesi氏)
現場で使えるロボットを開発するための課題を聞かれた後藤氏は「仮に1日中動き回るなら高効率でないといけないし、急停止すると過電圧が発生したり、複雑な動きをすると急激に消費電力が増えたりと、電源には過酷な条件が生まれやすい。また現場では外部からのノイズを受け続けながら動く必要もある。あらゆる『最悪の場合』を前提にして設計することが最も重要だ」と述べた。
スタートアップに求めるのは「ありえない企画」
続いて「スタートアップと協業する上で注目するポイント、スタートアップに求めることは何か」という質問が行われた。
後藤氏は「スタートアップが新しいテクノロジーを持っていることは前提として、インフィニオンが最も注目するのは実際のユースケースだ」とする。「フィジカルAIへの新しいアプローチを試みたが、この条件だとうまくいかなかった、という具体的な課題をデータと一緒に持ってきて、一緒にやりたいと言ってもらえると非常にうれしい。インフィニオンの製品も使いながら試行錯誤を進めて、答えを一緒に探したい」とした。
Khalesi氏は「2つある。まず1つ目として、ありえない企画を持ってきてほしい」と述べる。一例として量子コンピュータをロボティクスに応用する取り組みを挙げ、「まだ量子コンピュータ自体も研究段階だが、いろいろ組み合わせてみると、非常に狭い領域ではポテンシャルがあるらしい。こういった発想は大手企業にはできず、スタートアップの絶対的な強みだと考えている」(Khalesi氏)
2つ目として「会社組織の勉強」を挙げ、「例えばルネサスの場合、スタートアップとの主な接点はコーポレート側が握っているが、無数にある部門のどことつなげればいいか、確実にナビゲートできるわけではない。スタートアップ側で会社のリサーチをして、自分のソリューションがマッチしそうな事業部に合わせて話をできる方が、チャンスをつかみやすくなる」(Khalesi氏)とした。
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