レゾナックはなぜ「今」300mm SiC基板を開発したのか:開発担当者に聞く(3/3 ページ)
レゾナックは、300mmの炭化ケイ素(SiC)単結晶基板の開発に成功した。ただし、SiCパワー半導体では現在、150mmから200mmへの移行が進んでいる段階だ。なぜ、このタイミングで300mm品を開発したのか。開発の狙いや技術的な課題、今後の市場展望、海外メーカーとの競争について、同社の担当者に聞いた。
品質は現行品と同水準、放熱基板など新用途にも期待
今回開発した300mm SiC単結晶基板の品質について、レゾナックは「現在製造している150mm/200mm品と同程度の水準に達している」と評価している。品質の指標としては結晶欠陥などが挙げられる。ただし、具体的な数値については公表していない。
現時点で300mm SiCエピウエハーを販売する具体的な計画はないものの、顧客から要望があれば、300mm単結晶基板のサンプル提供には対応可能だという。
想定される用途は、従来のSiCパワー半導体に限らない。レゾナックは、SiCの高い熱伝導率を生かした放熱基板や、半導体パッケージ材料などへの応用にも注目している。
こうした用途では、パワー半導体向けとは異なる品質が求められる。パワー半導体向けのSiC基板では、デバイスの性能や信頼性に影響する結晶欠陥の少なさが重要になる。一方、放熱基板として利用する場合には、結晶欠陥の密度がパワー半導体向けほど重視されず、平たん度などが重要な評価項目になるという。結晶欠陥の少なさだけでは差別化が難しいので、コストも重要なポイントになるとみている。
300mm品の発表後、顧客からは関心が寄せられていて、具体的な会話の中で話題に上ることもあるという。ただし、今後どのような用途で採用が進むのかは、顧客側の開発状況や要求特性にも左右される。
レゾナックは300mm SiC単結晶基板だけでなく、300mm SiCエピウエハーについても開発を検討している。実現に向けては、大口径基板の取り扱いや装置への対応、膜厚の均一性やキャリア濃度の均一性などが課題になるとする。
300mm化とは別に、エピウエハー全般の技術開発では、顧客が開発するデバイスの進化への対応も求められる。例えば、より高い耐圧を実現するデバイスや、スーパージャンクション構造を採用するデバイスなどでは、それに適したエピタキシャル成長技術が必要になる。こうした次世代デバイスへの対応も、重要な開発テーマの1つだ。
単結晶からエピまで手掛ける強み
SiC材料の開発では、中国や欧米のメーカーが存在感を高めている。こうした中、レゾナックが自社の強みとして挙げるのが、単結晶基板からエピウエハーまで手掛けていることだ。
レゾナックはSiC単結晶の成長、基板加工、エピタキシャル成長までの技術を持つ。単結晶基板だけを評価していては分からなかった課題が、エピタキシャル成長を行うことで明らかになることもある。最終的に顧客が使用するエピウエハーとしての品質を高めるには、基板だけでなく、エピタキシャル成長まで含めて最適化することが重要になる。こうした知見を基板の開発にもフィードバックできることが、同社の競争力の1つになっている。
今後のSiC材料開発について、レゾナックは、顧客が求める品質の実現とコスト削減の両立を重視する方針だ。SiC基板やエピウエハーの品質が全体的に向上する中、価格面での競争も強まっている。レゾナックは「重要なのは品質とコストのバランスだ」と説明する。
顧客によって重視する品質は異なる。一般的に公表される結晶欠陥密度などの数値だけでなく、実際にデバイスを製造した際に問題なく使えるかどうかが重要だ。そのため、顧客が必要とする品質を把握し、それに見合ったコストで製品を供給することを目指すという。
非中国系サプライチェーンも強みに
一方、コスト面では中国メーカーとの競争が大きな課題になっている。中国ではSiC基板の開発や量産が進んでいて、価格競争力の高い製品も登場している。レゾナックによると、日本と中国では事業環境に差があり、中国メーカーとの価格競争は容易ではないという。
レゾナックもコスト削減に取り組んでいるものの、単純に中国メーカーの低価格に追随するのではなく、品質とコストを総合的に評価してもらうことを重視している。顧客の中には、中国系のサプライチェーンに依存することを懸念する企業もあるという。非中国系の供給元であることも、差別化要因の1つになるとの見方だ。
レゾナックは、日本国内でSiC単結晶基板からエピウエハーまでを一貫して手掛けていることも強みとして挙げる。経済安全保障の観点からも、国内にこうした供給体制を持つことには価値があり、顧客から評価されているとする。
同社は、300mm SiC単結晶基板の開発で得られた技術を現行品の競争力向上に生かしながら、顧客が求める品質とコストの両立を追求していく考えだ。
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