Wolfspeedが300mm単結晶SiCウエハー製造に成功:AIインフラ、AR/VR、パワー向けに
Wolfspeedが、単結晶300mm 炭化ケイ素(SiC)ウエハーの生産に成功したと発表した。同社は「当社はSiCの300mm化によって世界で最も要求の厳しい半導体アプリケーションの一部で新たな性能の上限と製造におけるスケーラビリティを実現する」と述べている。
Wolfspeedは2026年1月13日(米国時間)、単結晶300mm 炭化ケイ素(SiC)ウエハーの生産に成功したと発表した。同社は「この技術革新は、次世代コンピューティングプラットフォーム、没入型拡張現実/仮想現実(AR/VR)システム、高効率の先進パワーデバイスにとって大きな前進を意味する。当社はSiCの300mm化によって世界で最も要求の厳しい半導体アプリケーションの一部で新たな性能の上限と製造におけるスケーラビリティを実現する」と述べている。
破産申請を経て「新たなスタート」切ったWolfspeed
炭化ケイ素(SiC)ウエハーで高いシェアを有するWolfspeed。近年はSiCパワーデバイスでも投資を強化してシェアを拡大してきた。しかし、大規模な投資を進めてデバイス事業の強化を図る中、中国のSiCウエハーメーカーの急成長による価格競争の激化や世界的な電気自動車(EV)市場減速の影響も受け、経営が悪化。2025年6月に米国連邦破産法11条の適用を申請していた。同年10月には財務再編プロセスを無事完了し、米国連邦破産法11条の適用から脱却したと発表。『新たなスタート』を切っている。
Wolfspeedは「業界最大」(同社)かつ基幹的なSiC IP(Intellectual Property)ポートフォリオ(世界で2300件以上の特許を取得済みまたは出願中)を有していて、同社の最高技術責任者(CTO)のElif Balkas氏は「300mm単結晶SiCウエハー製造の成功は、結晶成長、ブールおよびウエハー加工における長年にわたる集中的なイノベーションの成果だ」とコメントしている。
Wolfspeedの300mm SiCプラットフォームは、高ボリュームの炭化ケイ素製造と、光/RFシステム用の高純度半絶縁基板の先進技術を統合するものだと説明。「これにより光、フォトニック、熱、電力の各領域を横断する新たなクラスのウエハースケール集積が実現する」としている。
Wolfspeedは、300mm SiCウエハー製造によってAIエコシステムの基幹要素、AR/VRシステム、先進パワーデバイスアプリケーションを支援する立場を確立したとし、その利点を紹介している。AIインフラに関しては、AIワークロードがデータセンターの電力限界を押し上げる中、電力密度/熱性能/エネルギー効率の向上が加速し続けていると言及。同社の300mm SiC技術は、高電圧電力供給システム、先進的熱ソリューション、アクティブインターコネクトのウェハスケール統合を可能にし、システム性能の向上が実現できるという。
また、高輝度ディスプレイおよび広視野角、効果的な熱管理を統合したコンパクトで軽量な構成が求められているAR/VRシステム分野では、SiCの機械的強度、熱伝導率、光学屈折率制御といった独自の材料特性が多機能光学アーキテクチャに最適だと説明している。300mm SiC技術では、複雑な光熱アーキテクチャをスケーラブルに製造することが可能になり、より軽量かつ高性能なAR/VRデバイスの実現につながる。
さらに300mm SiCウエハープラットフォームへ移行は、先進パワーデバイスの量産拡大の重要なステップだとも強調。「より大きなウエハー径は、高電圧送電網や次世代産業システムを含むアプリケーションの需要増大に、高いコスト効率で対応する能力を強化する」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
SiCウエハー世界市場は2035年に5724億円規模へ 中国メーカーが攻勢
富士経済によると、炭化ケイ素(SiC)ウエハーの世界市場は、2025年見込みの1943億円に対し、2035年は約3倍の5724億円規模になるという。今後は、中国を中心に8インチウエハーを用いたパワー半導体デバイスの製造が本格化する見通しだ。
SiCパワーデバイス市場は年率20%で成長、30年に103億ドル規模に
フランスの市場調査会社Yole Groupによると、SiCパワーデバイス市場は2024年から2030年まで年平均成長率(CAGR)20%で成長し、2030年には103億米ドル規模に拡大する見込だという。
「技術絶やさないで」 中国勢が躍進するSiC市場、日本の勝ち筋を探る
高耐熱/高耐圧用途向けでシリコン(Si)に代わる次世代パワー半導体材料として、炭化ケイ素(SiC)への注目度がますます高まっている。2025年9月に開催されたSiCに関する国際学会「International Conference on Silicon Carbide and Related Materials(ICSCRM) 2025」での動向などを踏まえて、SiC開発の現状や日本を含めた世界のプレイヤーの勢力図について、名古屋工業大学 電気・機械工学科 教授の加藤正史氏に聞いた。
SiCの20年 ウエハーは「中国が世界一」に、日本の強みは何か
次世代パワー半導体材料として注目度が高まる炭化ケイ素(SiC)。SiCパワーデバイスの研究開発は2000年代以降、飛躍的に進展してきた。SiCのこれまでの研究開発やパワーデバイス実用化の道のり、さらなる活用に向けた今後の課題について、京都大学 工学研究科 教授 木本恒暢氏に聞いた。
東芝D&S、中SICCとSiCパワー半導体用ウエハーで連携
東芝デバイス&ストレージは2025年8月22日、中国の炭化ケイ素(SiC)ウエハーメーカーSICCとSiCパワー半導体ウエハーに関するビジネス上の連携に向けた基本合意を発表した。SiCパワー半導体の特性向上や品質改善および、安定的なウエハーの供給拡大に向けた連携を実施する。
「業界初」中国SICCが300mmのSiC基板を発表
中国のSiC基板メーカーSICCが、「業界初」となる300mmのSiC基板を開発した。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州最大級のエレクトロニクス展示会「electronica 2024」および併催された「SEMICON Europa 2024」で発表した。
