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「ほっとした」――ルネサスが生産再開の那珂工場を公開ビジネスニュース 震災復興(2/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクスが、生産再開した那珂工場の300mmラインをマスコミに公開。同社の赤尾泰社長は生産再開時期の前倒しに「正直、ほっとした」と心情を吐露した。

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予定よりも早く復旧できた理由は?

 これだけ甚大な被害を受けながら、なぜ当初の予定よりも早く復旧できたのだろうか。

 同社 那珂工場長の青柳隆氏は復旧期間短縮の取り組みとして、以下の5項目を挙げた。

  1. 1日当たり最大2500人超の復旧支援人員投入
  2. 1日24時間、週7日体制
  3. 短工期化の工夫(並行作業、多め、早め手配)
  4. チームワーク(情報共有を徹底し心ひとつに取り組み)
  5. 安全管理の徹底(危険予知)

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ルネサス エレクトロニクス那珂工場長の青柳隆氏

 「普及計画としては、1. インフラ復旧、2. 生産設備修復、3. 試験生産・品質管理の3ステップで取り組んだ。3月21日の時点では生産再開を9月1日としていたが、3月28日の時点でインフラ復旧の予定が1カ月前倒しできたことから生産再開を7月15日に修正。さらに4月上旬に1日最大2500人超の人員を投入できたことから4月22日の時点では生産再開を6月15日と大幅に前倒しすることができた。実績としては6月1日生産再開(200mmライン)なので、当初の予定より3カ月前倒しできたことになる」(青柳氏)。

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那珂工場における普及計画の変遷

 同社では前工程生産拠点の5工場(那珂、高崎、甲府、山形、津軽)が被災し、震災直後は前工程の生産能力(自社工場のみ)が約50%まで落ち込んでいた。しかし那珂工場を除く4拠点に関しては被害が軽微であったことから3〜4月には生産を再開しており、生産能力全体の15%を占める那珂工場の今回の復旧により「通常の稼働状況になった」(赤尾氏)ことになる。

 今後は、被災前の供給能力にいつ戻るかに注目が集まるが、同社では那珂工場での量産体制構築を急ピッチで進めると同時に、グループ内の他工場や外部ファウンダリによる代替生産も活用することで、被災前と同等の供給能力回復時期を9月末とアナウンスした。これは10月末としていた5月18日発表の当初計画から1カ月の前倒しとなる(関連記事「ルネサスのマイコンが6〜10月に供給不足へ、外部ファウンドリ含む代替生産対応を推進」)。

 「多くの支援の成果、試験生産の結果が問題なかったこと、そして製造設備の復旧が予定より早かったことなどにより、当初計画から1カ月前倒しできた」(赤尾氏)。

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那珂工場で生産していた製品の供給能力イメージ図

 震災後に続いている余震対策としては、震度5想定での対策を実施。具体的には、ケーブル落下防止策としてケーブルの吊り構造を採用したほか、壁の崩落処置や生産設備の固定といった対策を施しているという。「震度5を超えると(生産ラインで使う)石英ガラス製のチューブが壊れてしまうことが生産再開のネックになっていたが、これには壊れてもすぐに交換できるよう予備部品を多めに確保することで対応している」(青柳氏)。

欠かせなかった「自動車業界からの支援」

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「正直、ほっとした」と心情を吐露する赤尾氏

 今回、車載マイコンを生産していた那珂工場の被災は、自動車業界に大きなダメージを与えた。「われわれの製品が供給できないことによって、自動車が生産できない、当初の生産計画を守れなかったという事実は、自動車業界への直接的な影響だろう」(赤尾氏)。

 その一方で、今回の復旧時期の大幅な前倒しには自動車業界の支援が欠かせなかったようだ。「自動車業界の皆さんには電気、排気ダクト、水関係、クリーンルームなどインフラ関係の復旧に尽力してもらった。さらに地震の影響による生産設備のズレを修正(位置決め)するという大変な作業にも活躍してもらった」(青柳氏)。

 「こんなに早く生産を再開できて、正直『ほっとした』という気持ち。大変多くの皆さまの支援をいただいたということを裏返すと、大変多くの皆さまに影響を及ぼしたということ。それだけにその影響を少しずつ具体的なカタチで緩和できるということにほっとしている。半導体の生産は、今日手配をして来週すぐ能力が上がるというものではない。(自動車業界が上期に生産調整をした分、下期に増産する可能性も含めて)下期の需要増に関してはできるだけ早い段階でフォーキャストを見極め対応したい」(赤尾氏)。

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