ディー・クルーが高周波PAのロードマップ公開、マルチバンド高出力品も計画:無線通信技術
ディー・クルー・テクノロジーズは、1.5GHz帯に対応したパワーアンプ(PA)IC「DC1302C」のサンプル提供を2012年3月までに始める計画。一般的な通信機器に向けた高出力PAの製品化も予定している。
ディー・クルー・テクノロジーズは、モバイル機器や通信機器に向けたパワーアンプ(PA)ICの開発ロードマップを公開した(図1)。
700MHz〜2GHzの合計20バンドに対応したモバイル機器向けマルチバンドPA「DC1302B」のサンプル出荷を2011年10月に始めるのに続いて、700MHz〜2GHzの中間の周波数帯である1.5GHz帯に対応した品種「DC1302C」のサンプル提供を2012年3月までに始める計画である。モバイル機器向けだけではなく、一般的な通信機器に向けた高出力PAの製品化も予定しており、市場の状況にも依存するものの、2013年末ころにサンプル提供を始める見通しだ。
2011年10月にサンプル出荷を始めるDC1302Bは、業界で初めて20もの周波数バンドに対応したPAである(関連記事)。独自のバンド切り替え機能を開発することで実現した。詳細は明かさないが、「MEMSスイッチといった特殊なデバイスを使わずに、挿入損失の小さい高周波スイッチや整合回路を実現する技術に独自性がある」(同社の常務取締役CTO兼プラットフォーム開発統括部長を務める美齊津摂夫氏)という。これまでは、700MHz〜2GHzの複数の周波数バンドに対応するには狭帯域のPAを複数使う必要があったが、今回開発した品種を使えば、1つで済む。
「今後、利用する通信方式や周波数帯域を意識しないでデータをやりとりする仕組みが実用化されるだろう。このような無線通信方式では、複雑なシステムをシンプルに構成するために、マルチバンドPAがますます重要になる」(同氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- →Analog ABC(アナログ技術基礎講座)連載一覧
- 無線設計の不具合を見つけ出せ、スペアナの進化が視界を広げる
一般家庭に無線機器があふれ返る現代。機器メーカーは、標準規格に準拠した半導体チップやモジュールを利用すれば、比較的容易に無線機能を組み込める。しかし規格の林立や機器の複雑化などで、無線設計の不具合からは簡単に逃れられないのが実情だ。その不具合を確実に捕捉し、原因を追究する道具が必要になる。 - いかに堅牢なインターネット接続を実現するか、NICT担当者が被災地で感じたこと
いかに耐久性の高いインターネット接続環境を構築するか……。今回の震災が残した課題だろう。独自開発のインターネット接続用無線ルータを被災地に設置した情報通信研究機構(NICT)の担当者に話を聞いた。 - コグニティブ無線実用化へ大きな一歩、NICTが大規模な実証実験を開始
2010年9月1日、このコグニティブ無線通信技術の実用化に向けて、大きな弾みとなるであろう新たな取り組みが始まった。情報通信研究機構(NICT)が社会実証実験を開始し、藤沢や茅ヶ崎に設置した合計500台のコグニティブ無線ルータを、一般利用者に開放する。 - 最適な公衆無線網を選ぶ、IEEE準拠のコグニティブ・ルーターが登場
無線通信サービスの選択肢が広がり、無線通信機能を備える携帯型機器が増えることは、利用者にとって喜ばしいことだ。しかし、現在の状況は、利用者とって嬉しい反面で、嘆かわしい状況である。それぞれの携帯型機器に適した無線通信方式が分かりにくくなっている。 - 村田製作所がルネサスのパワーアンプIC事業を買収、 携帯電話機向けフロントエンドモジュールを強化へ