用途が広がるモーションセンサー、「プラットフォーム化」で新市場開拓へ:センシング技術(2/2 ページ)
センシング技術が新たな分野に広がっていることを受け、センサーを手掛ける半導体ベンダーは、「電子部品のプラットフォーム化」という新たな戦略を打ち出している。
高度な処理アルゴリズムで機器開発を支援
半導体ベンダーのSTマイクロエレクトロニクスも、「iNEMO Engine」と呼ぶセンシングのためのプラットフォームの提供を既に始めている(関連記事その1、関連記事その2)。
iNEMO Engineは、3軸加速度センサーと3軸角速度センサー、3軸地磁気センサー、近接センサー、気圧センサーを統合したモジュールに、収集したデータを処理するソフトウェアを組み合わせたもの。
特徴は、カルマンフィルタ理論に基づく、適応型の予測/フィルタリングアルゴリズムを採用していることである。「複数のセンサーが検出する複雑な情報を高度なアルゴリズムで解析することで、測定誤差やセンサー間の干渉を自動的に補正し、モーション検知の精度を大幅に改善できる」(同社)という。Si材料のMEMSセンサーは水晶材料のセンサーに比べると検出精度という観点では劣るが、同社は高度な処理アルゴリズムによって検出精度を高めている。
同社は、MEMSセンサーの普及の歴史を振り返ると2つの波があったと説明する。1つ目の波は、エアバッグや姿勢制御、タイヤの圧力検出、ナビゲーションといった車載用途に、多くのセンサーが搭載され始めた1990年代。2つ目の波は、携帯電話機やゲーム機器、デジタルカメラ、ノートPC、スマートフォンといった民生機器にセンサーが広く採用され始めた、2005〜2006年ころである。
そして同社が、今目前に迫っている3つ目の波と説明するのが、「人体周辺でのセンサー活用である。例えば、体内埋め込みデバイスや投薬システム、生体情報のモニタリングサービス、遠隔地の患者モニタリングサービスといった用途である。「短期的には民生機器への採用拡大がMEMSセンサー市場をけん引する。ただ、新市場という観点では、MEMSセンサーは新たな段階に突入した。それが、人体周辺のセンシングアプリケーションだ」(同社)。
同社では、今後の市場拡大を見込み、2010年末に1日当たり150万個だったMEMSセンサーの生産能力を、2011年末までに1日当たり300万個と2倍に増やす。「歩留まりを迅速に高める製造技術に加えて、MEMSという加工技術とアナログ回路の設計技術の両方を有していることが当社の強みだ」(同社)。
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