スマホ普及で需要増加も、DRAM価格の低減に歯止めかからず:ビジネスニュース 業界動向
スマートフォンやタブレット端末の普及でモバイル機器向けDRAMの需要は堅調に増加している。ただし、それ故、同市場への参入を狙うメモリメーカーが増え、DRAMの価格は下がり続けると予想される。
台湾の市場調査会社であるTrendForceによると、スマートフォンやタブレット端末の人気の高まりを受け、DRAMメーカーはモバイル機器向けDRAMの生産の拡大を積極的に進めているという。これにより、利益を向上できるだけでなく、コモディティDRAMの生産におけるリスクを低減することもできるとしている。
TrendForceは、「2012年第2四半期におけるスマートフォンの出荷台数は、前年同期比48%増となる1億4800万台に達する」と予測する。同社は、「Android 4.0(Ice Cream Sandwich)とクアッドコアチップを搭載し、2012年の注目規格であるLTE(Long Term Evolution)に対応した機種の登場によって、スマートフォン市場のシェアはさらに拡大し、モバイル向けDRAMの需要も増えると予想される」と述べている。
TrendForceによると、モバイル機器向けDRAM市場で確固たる地盤を築いているのは、韓国勢だという。Samsung ElectronicsとSK Hynixの売上高を合計すると、モバイル機器向けメモリ市場全体の70%を占める。両社は2012年後半に、次世代モバイル向けDRAMであるLPDDR3の量産を開始する予定だという。LPDDR3は、スマートフォンやタブレット端末の他、Ultrabookにも搭載されるようになると予想される。
「日本のDRAMメーカーであるエルピーダメモリは、2012年2月に会社更生法の適用を申請した。今後の行方が懸念される中、同社は、利益の増加と市場シェアの拡大を目指して、モバイル機器向けDRAMの生産に積極的に取り組んでいる。ただし、同社のLPDDR3の生産スケジュールは、韓国メーカーと比べると若干遅れている。台湾メーカーに関しては、現時点では、3Xnmプロセス技術を適用した8GビットのLPDDR2を製造するメーカーが1社あるのみだ。だがいずれのメーカーも、モバイル機器向けメモリ大手からの市場シェアの奪取を狙っている」(TrendForce)。
TrendForceは、「4〜8GビットのDRAMは、Android 4.0やMicrosoftの『Windows 8』のメモリ要件を十分に満たしているため、今後6〜9カ月は、スマートフォンのDRAM搭載量は増加しないと予想される。しかし、2012年第2四半期の出荷台数が、前期比8.8%増と予想を上回ったことから、需要は増加傾向にあるとみている」と述べた。
DRAM市場ではコモディティDRAMの供給過剰が続いており、DRAMメーカーはスペシャリティDRAMに段階的に生産を移行している。その結果、DRAMの契約価格は約20米ドル(1020.41ルピー)に上昇した。ただし、DRAMのコスト構造では、利益を生み出し続けることは難しい。
モバイル機器向けDRAMに移行することは理にかなった選択ではあるが、この時流に乗るメーカーが非常に多く、2012年第2四半期にはDRAMの契約価格は前期比で10〜15%下がった。DRAMメーカーがプロセス技術の微細化や歩留まり率の向上に取り組んだとしても、モバイル機器向けDRAMの価格や利益はすぐにコモディティ品レベルに下がってしまうと予想される。モバイル機器向けメモリの収益性は今後も、間違いなく下がっていくとみられている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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