ドイツの太陽光発電、「失敗」から日本が学べること:ビジネスニュース オピニオン(4/4 ページ)
ドイツは膨大な太陽電池を導入した結果、固定価格買い取り制度(FIT)が維持できなくなり、崩壊寸前――このような意見を耳にしたことはないだろうか。このような見方は正しいのか、FIT導入目前の日本が学べることは何か、解説する。
日本がドイツから学べることは何か
EPIAの分析によれば、2011年にドイツ市場が過去最大の導入量に至った原因は2つあるという。1つは太陽光発電関連、特に太陽電池モジュールの価格が急落したことだ。中国企業の大増産などが要因となって需給ギャップが発生したことによる。
もう1つは、2011年7月にドイツで実施が予測されていたFITの買い取り価格値下げが延期されたことだ。2つの要因が重なったことで、2011年第4四半期だけで3GWもの新規導入に至った。これは2011年度の日本国内市場向け出荷量と国内企業の輸出量を足し合わせた量をも上回る導入量である。
ドイツはFIT改定に関して豊富な経験があるものの、いったん市場が過熱したときの制御は一刻を争うことが分かる。これは日本が学ぶべき点だ。FITの買い取り価格が導入コストから計算した額よりもあまりにも高いと、容易に「バブル」が起こる。
バブルで何がいけないのか
2012年7月から日本国内で始まるFITの買い取り価格(42円/kWh)が高すぎるのではないか、という批判が挙がっている。FITの原資は電気料金だ。太陽光発電システムを導入していない個人や企業にとって、買い取り価格がなるべく低い方が電気料金を抑制できる。
だが、これ以外の批判もある。高すぎる買い取り価格は電気料金以外にもさまざまな問題を引き起こすからだ。FITの狙いは太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーの普及促進にある。量的な拡大はもちろん、技術の進歩を支えるという意味もある。買い取り価格が高すぎれば、技術的に未熟な、コスト高な発電システムが市場で大量に生き残ってしまう。これが問題だ。既存のエネルギー源に匹敵する電力源を作り出すことがFITの究極の目的であり、これに反してしまう。このようなシステムを提供する企業が、バブル終了後にどうなるのかは想像に難くない。
設置コストの内訳を調査すべき
太陽光発電システムを導入する場合、太陽電池などの製造コストは全導入コストの半分を占めるにすぎない。残りの半分は設置コストだ(関連記事:「太陽電池の製造コストはどうなる――プラスチック製には勝機があるのか」、記事本文)。つまり太陽電池モジュールというハードウェアだけを見ていてはいけない。
産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センター評価・システムチーム研究員の櫻井啓一郎氏によれば、高すぎる買い取り価格はさらに別の問題を引き起こすという。
「太陽電池モジュール自体を海外からたとえ全量輸入したとしても、国内ではサービス部分で勝負できる。このような最悪ケースの場合でも、導入コストの半分以上は国内経済に寄与すると考えるべきだ。従ってこの部分を育てるFITでなければならない。しかし、人材や産業の育成にはある程度の時間がかかるため、高すぎる買い取り価格によって生まれたバブルには追い付けない」(櫻井氏)。
このような問題が起こっていないかどうか検証するためには、FITが人材や産業の育成に役立っているかを監視する必要がある。ここに課題がある。「設置コストについて、国内では公的な統計が整備されていないため、現状の把握はもちろん、過去からの推移、将来の予測も難しい状態にある」(櫻井氏)。FIT実施以外にも進めなければならない取り組みは多い。
<訂正>記事の掲載当初、1ページ目第4段落目で「2200万kWh」「22GWh」としていましたが、これは「2200万kW」「22GW」の誤りでした。また、同じ段落で、「ドイツは日本と比べて平均日照量が2分の1程度」としていましたが、これは「ドイツは日本と比べて平均日射量が2割減(8割程度)」の誤りでした(The European Commission Joint Research Centre(JRC)によるデータ)。お詫びして訂正いたします。上記記事は既に訂正済みです。
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