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太陽光を無駄なく使う、201X年の技術エネルギー技術 太陽電池(3/5 ページ)

再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まり、太陽電池は激しい価格競争に入っている。このようなときこそ、太陽電池の高効率化を忘れてはならない。なぜなら、変換効率を高めることが、低システムコスト実現に役立つからだ。変換効率向上に対してどのような手法が有望で、どこまで高められるのか、解説した。

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多接合を使って効率を高める

 高いエネルギーを帯びた光子からは大きなエネルギーを、低いエネルギーを帯びた光子からは小さなエネルギーを得る手法は存在する。バンドギャップが異なる複数の半導体を光の入射方向から見て薄く層状に積み重ねた多接合太陽電池だ。

 図2を見ると、1種類の半導体を使う限り30%以上の変換効率は理論上でも望めないが、多接合であればこれを超えられることが分かる。


図2 さまざまな太陽電池と変換効率 灰色は理論変換効率である。オレンジ色は最高記録、黄色は量産品の効率を示す。太陽電池の種類(縦軸)は、上から3接合の太陽電池(集光した場合)、単結晶Si(最高記録は255倍集光時のもの)、多結晶Si、CIGS、CdTe(カドミウムテルル)、アモルファスSi、有機薄膜太陽電池。出典:米National Renewable Energy Laboratory(NREL)

 トップ層(入射光に対して上側)にバンドギャップが大きい半導体を置き、ボトム層(下側)に小さい半導体を配置したとしよう。すると、トップ層では高エネルギーの光子(波長の短い青など)を吸収し、ボトム層が低エネルギーの光子(波長が短い赤や赤外線)を吸収する。波長の長い光はトップ層をほぼ素通りする。

 太陽スペクトルの形状から、半導体のバンドギャップの組み合わせを最適化すれば変換効率を高めることが可能だ。2接合なら42%、3接合なら47%まで変換効率を高められる。さらに光をレンズや鏡で集光すると、変換効率を10ポイント程度高められる。

 例えば、シャープは2012年5月に、3接合で43.5%という記録を達成したと発表している(306倍集光時、関連記事)。このときは、トップ層にInGaP(インジウムガリウムリン)を用いた。ミドル層はGaAs(ガリウムヒ素)、ボトム層はInGaAs(インジウムガリウムヒ素)だ。シャープによれば、ボトム層の下にさらにバンドギャップが小さい層を形成して、4接合とすることで、集光時に変換効率50%を狙えるという。

 多接合が役立つのはSi薄膜太陽電池でも同じだ。1層のSi薄膜太陽電池はバンドギャップが1.7eVと高いアモルファスSi薄膜からなる。この下部に同1.1eVの微結晶Si層を作り込むことで、2接合太陽電池(タンデムセル)として変換効率を高めるという作戦だ。

 Si薄膜太陽電池は、大面積の太陽電池を少量の材料、短い時間で製造できることを目指した、低コスト化に向く太陽電池だ。Si薄膜以外の層をトップ層に成膜すれば効率は高まるが、もともとの持ち味が失われてしまう。

 Si薄膜太陽電池は、製造後に光に当てるとアモルファスSiの変換効率が2〜3ポイント下がる光劣化という現象が起こる。このため、他の半導体層を追加するよりも、光劣化を防ぐ研究開発が続いている。例えば産業技術総合研究所の太陽光発電工学研究センターで先端産業プロセス・低コスト化チームの主任研究員を務める松井卓矢氏は、2012年5月に、トライオード型プラズマCVD法を用いることで、光劣化を起こすとされる高次シラン種を除去する手法を発表、光劣化を約10%に抑えることができた。元の太陽電池が変換効率12%なら、光劣化後に変換効率10.8%を保てることになる。この技術を利用してタンデムセルで変換効率11.7%を実現したという。

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