Imaginationによる買収で決着するも、MIPS特許の多くは“ARMの支配下”に?:ビジネスニュース
Imagination Technologiesによる事業買収により、MIPSが有する580件の特許のうち82件はImaginationに移管される。しかし、その裏では、残り498件の特許が、ARMの主導によってASTというコンソーシアムの手に渡ることになっている。この買収劇における勝者は、ImaginationとARMのうちどちらなのか。
約1年にわたって売却のうわさの渦中にあった米MIPS Technologiesは、グラフィックス系IP(Intellectual Property)のベンダーである英Imagination Technologiesの手に渡ることになった。この買収劇の裏では、英ARMが絡んだ複雑な取引が行われていた。
MIPSは米国時間の2012年11月5日、同社の事業を6000万米ドル(約48億円)でImaginationに売却することを発表した。MIPSの160名のエンジニアと82件の特許がImaginationに移管されることになる(関連記事:CPUコア業界に地殻変動、MIPSをImaginationが買収)。
この買収は、一般的に言えば、ImaginationがCPUコアに関する専門技術を強化するために行ったことだと考えられる。だが、別の見方をすれば、Imaginationがグラフィックス分野における優位性を保つためにとった策だと考えることもできる。Imaginationは、CPUとGPUの統合ソリューション戦略を推進してきたARMに対抗する手段を得たことになるからだ。
一方のARMは、Bridge CrossingによるMIPSの特許ポートフォリオ買収において主導的な役割を果たすことになった。Bridge Crossingは、業界コンソーシアム「Allied Security Trust(AST)」の一機関である。同機関は、498件から成るMIPSの特許ポートフォリオの買収に3億5000万米ドル(約280億円)を投じる予定だ。そのうち1億6750万米ドル(約134億円)をARMが支払うという。Bridge Crossingの参加企業には、Avaya、HP、IBM、Intel、Motorola、Oracleの各米国企業、オランダのPhilips、カナダのResearch in Motion(RIM)などが含まれており、買収した特許の売却やライセンス供与が頻繁に行われている。
ImaginationとMIPSの経営幹部らは、どの企業がASTに参加しているのか、そして498件の特許ポートフォリオにはどの企業がアクセスできるのかという問いには答えていない。この点について、市場調査会社の米The Linley Groupでシニアアナリストを務めるJ. Scott Gardner氏も、「QualcommやBroadcom、Appleといった企業が、ASTが買収した特許ポートフォリオにアクセスするためにはライセンスを取得する必要があるかどうかは不明だ」としている。ただ、同氏は、「ASTの基本的な目的は、重要な特許が、権利を悪用する者の手に落ちるのを防ぐことだ。QualcommらはASTに参加しているので、安全な存在だと考えてよいだろう」と述べている。
ImaginationのCEO(最高経営責任者)を務めるHossein Yassaie氏は、「MIPSアーキテクチャの重要な部分は、当社が取得した82件の特許によって網羅されている」ことを強調している。これによりImaginationは、MIPSアーキテクチャをより進化させることが可能であるほか、同アーキテクチャの既存/将来的なライセンシー(ライセンス利用者)から特許権の使用料を得ることができる。Yassaie氏は、「当社とMIPSの間で買収手続きが完了すれば、MIPSに関する特許権の使用料を得るのは、ASTではなく、当社だ」と述べている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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