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誰も望んでいない“グローバル化”、それでもエンジニアが海外に送り込まれる理由とは?「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(18)(2/6 ページ)

今回は実践編(プレゼンテーション[後編])です。前編ではプレゼンの“表向き”の戦略を紹介しましたが、後編では、プレゼンにおける、もっとドロドロした“オトナの事情”に絡む事項、すなわち“裏向き”の戦略についてお話します。裏向きの戦略とは、ひと言で言うなら「空気を読む」こと。ではなぜ、それが大事になってくるのでしょうか。その答えは、グローバル化について、ある大胆な仮説を立てれば見えてきます。

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プレゼンの“裏向き”の戦略とは

 こんにちは。江端智一です。

 前回の「プレゼンテーション(表向き)編」においては、プレゼンテーションがドラマであり、われわれは俳優または女優であることと、非核三原則と同様、英語での議論が必要となるような話題を作らないことについてお話しました。

 さて今回は、プレゼンテーションという活動の裏に潜む、会社や個人の思惑や陰謀といった「裏向き」のドロドロしたお話と、その中で「英語に愛されないエンジニア」がどのように対応すべきかをお話したいと思います。

 これまでの連載においては、海外出張の際に必要な議論は、電子メールなどを使って国内で完了しておき、プレゼンテーションや打ち合わせは、単なる議論の結論の確認だけを行う場にしてしまうことを提案しました。

 実は、プレゼンテーションや打ち合わせには、上記の他に、もう一つ重要なミッションがあります。

 それは、「空気を読むこと」、名付けて“KY戦略”です。

グローバル化は“誰が”望んでいるのか


写真はイメージです

 現在、どの分野においても「グローバル化」が叫ばれています。「グローバル化」というのは、簡単に言えば、日本国内でのビジネスを、海外にも展開することです。

 この「グローバル化」と「英語が使える/使えない」の話はセットで語られることが多いです。ですので、現在の日本においては、TOEICなどの語学能力試験が、まるで宗教のようにあがめられている状況が発生しているわけです(以下、これを「TOEIC教」といいます)。

 企業が「TOEIC教」の布教活動を進め、社員がその信者となることは、決して悪いことではありません。社内公用語を英語にしようとしている会社は、それを試みない会社よりはずっと立派だと思います。

 ただし、その「TOEIC教」から「グローバル化」の恩恵が得られるかどうかは、今の段階では不明です。私の場合、「TOEIC教」は私に「試練(屈辱、羞恥、絶望)」しか与えてくれません

 ちなみに、私の娘の学校でも、宗教の分派(TOEFL教)が広がっているようです*1)

*1)例えば、こちらを読めば分かると思います。

 「グローバル化」に話を戻しましょう。「グローバル化」は、英語コミュニケーション以外にも、面倒な事項がウンザリするほどあります(経済産業省資料を参考に作成)。

項目 概要 考慮すべき対応
(1)体制 現地法人化、パートナ会社選定 守秘義務の徹底
(2)法律 当該国成立特許権、各種の規制(電気、電波ノイズ) 出願等、特許権の自己調査、現地事務所への調査要請
(3)輸管・調達 キャッチオール規制等、現地調達(汎用機)、輸出(専用機)の判断 「税制上、現地調達率を上げる」ことが常に正しいとは言えない場合もある
(4)標準化対応 当該国特有規格、デファクトスタンダード 安全性基準(SILなど)は得に重要
(5)ドキュメント、プレゼン 英語翻訳、プレゼンテーション マニュアル、プレゼンテーション資料の全文英語化は必須
(6)市場調査 需要者、売上、シェア Bizモデル、キャッシュフローなど

 ここから分かるように、「グローバル化」は、社員のTOEICのスコアを上げるだけで解決できるような簡単なものではないのです。私なんか、社内ビジネスのグローバル化の検討(市場リポートなどを使った机上シミュレーション)で、「もー、全然分からんわーい」と、何度書類を放り投げたことか分かりません。

 「グローバル化」の施策は、恐ろしく難しいだけでなく、極めてリスクが高いです。下手をすれば会社がつぶれるような判断を、経営者がやすやすと下せるとは思えません。

 そして当然、われわれ英語に愛されないエンジニアは、「「海外で仕事をしたい」なんて一言も言っていない!(第1回)」のです。

 しかし、国内の市場だけでは利益を上げられない。そこで、仕方なく海外に打って出ることになります。つまり、「グローバル化」対応とは、燃え上がる野心から生まれるものではなく、消去法から選ばれるやむを得ない選択なのです。

 そこで今回は、一つ大胆な仮説を立てて考えてみたいと思います。

本当は誰も「グローバル化」なんか望んでいない

 この仮説をベースにすると、海外出張の打ち合わせにおいては、「空気を読む」ことがとても重要な任務であることが分かってきます。

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