ルネサスが“ARM搭載マイコン”の第1弾製品「RZファミリ」を発売:プロセッサ/マイコン
ルネサス エレクトロニクスは、ARMのCortex-A9を搭載するハイエンドマイコン「RZファミリ」の第1弾製品群のサンプル出荷を開始した。同製品ファミリは、ルネサスとして初のARMコアを搭載したマイコンとなった。
ルネサス エレクトロニクスは2013年6月20日、CPUコアにARMの「Cortex-A9」を搭載したハイエンドマイコン「RZファミリ」の第1弾製品群として15品種の製品化を発表し、うち10品種のサンプル出荷を開始した。車載機器や産業機器、家電などのヒューマンマシンインタフェース(HMI)制御向けのマイコンで、「マイコンとしては、世界最大となる10Mバイトの大容量RAMを搭載した」(ルネサス)とする。
当初は“マイクロプロセッサ”だった「RZファミリ」
ルネサスは2012年10月に「RZファミリ」の概要を発表した際は、マイコン(MCU)ではなく、「マイクロプロセッサ」(MPU)と位置付け、ARMコアを搭載するマイコン「ARMマイコン」とは、一線を画していた。しかし、今回、ルネサスでは、「(独自CPUコアを搭載する)RL78、RX、RH850ファミリといったマイコン製品群に、今回RZファミリを追加する」とし、その位置付けをマイクロプロセッサからマイコンに変更している。その理由としてルネサスは、「基本的にRZファミリは、MPUだが、マイコン同様の使い勝手を実現しているため、マイコンという位置付けにした」と説明している。
「マイコンとして世界最大」の10MバイトRAM搭載
Cortex-A9を搭載するARMマイコン「RZファミリ」の第1弾製品は、主にHMI制御システム向けの「RZ/A1グループ」の15品種で、搭載RAM容量の異なる「RZ/A1H」(搭載RAM10Mバイト)、「RZ/A1M」(同5Mバイト)、「RZ/A1L」(同3Mバイト)の3つのシリーズを展開する。「マイコンとして世界最大」という最大10Mバイトなど大容量RAMを搭載することにより、従来、MPUと外付けDRAMという構成が一般的だったHMI制御システムを1チップのマイコンに集約可能。DRAMを外付けすることなく、WXGAサイズ(1280×768画素)の画像表示を実現できるという。これにより、システム設計が容易になる他、システムサイズ、コストの低減に貢献する。加えて、短期間でインタフェース規格が変更されるため難しかった同一DRAMの調達の必要性もなくなるため、製品の生産/サポート期間の長い産業機器分野などの調達不安も解消されるという。
ルネサスでは、ARMと共同で、「Cortex-M」用のリアルタイムOSであるCMSIS(Cortex Microcontroller Software Interface Standard)-RTOS「RTX」を、より処理性能の高い「Cortex-A」に実装した。ルネサスは「Cortex-Mで開発したアプリケーションソフト資産のCortex-Aへの移行が容易になり、リアルタイム性能が要求される分野に対応する性能スケーラビリティーを提供する」という。
CPUの最大動作周波数は、いずれの製品も400MHz。CPU以外の周辺機能については、「HMI用途で数多くの市場実績がある」という従来マイコン製品「SH7260シリーズ」の周辺機能を継承し、一部を強化した。そのため「新製品を採用するユーザーは、システム開発において当社従来品で培った技術資産を生かすことができる」という。
Ethernet AVBコントローラを搭載
RZ/A1HとRZ/A1Mは、グラフィックス機能として、OpenVG1.1対応2Dグラフィックスアクセラレータを搭載し、イーサネットコントローラ、Ethernet AVBコントローラ、などのインタフェース機能を備える。40nmプロセスを使用し、動作電源電圧は3.3V/1.18Vとなっている。
開発サポートについてルネサスは、「ARMのCPUを採用することによりARMエコシステムが活用できるため、ユーザーのシステムの開発期間短縮および開発費削減に貢献する。当社は、従来ルネサスのマイコンをサポートしていたツールベンダ各社との協業により、今まで以上に幅広く柔軟性に富んだ開発環境をユーザーに提供する」とコメントしている。
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