アップルとサムスンの特許係争、雪解けの日は近い?:アップルとグーグルの和解で
AppleとMotorola Mobility(Googleの傘下)は、全ての特許訴訟を取り下げることで合意した。この動きから、AppleとSamsungの特許係争も終局に向かっているとする見方もある。
AppleとGoogle傘下のMotorola Mobilityは2014年5月16日(米国時間)、両社間の全ての特許訴訟で和解することに合意した。韓国で2014年5月19日に報じられたところによれば、Appleが今後、最大のライバル企業であるSamsung Electronicsとの間でも、同様に和解を進めていくのではないかとの見方がある。Appleがスマートフォンをめぐる特許訴訟で対応に変化を見せたことから、同社がこれから前進して、再び革新的な技術を生み出すことに注力していく考えであることが読み取れる。
AppleとMotorolaの和解の知らせには、誰もが驚いたのではないだろうか。両社の訴訟は、Motorolaが2010年に、Appleがスマートフォン関連の複数の特許を侵害しているとして訴えたことから始まっている。このうちの特許の1つは、携帯電話機を3Gネットワーク上で機能させる上で必要な、SEP(Standard Essential Patent:標準必須特許)だとされている。Appleがこれに対して反訴し、米イリノイ州シカゴの連邦地裁が最終的に複数案件を一括で審理した。しかし担当判事は、2012年に行われた略式裁判において、「両社とも、特許侵害によって生じた損害を立証できていない」として、訴訟を棄却している。その後この裁判は、今回の和解が2014年5月16日に発表される数週間前に、控訴裁判所において審理が再開されていた。
AppleとMotorolaは、ようやく冷静さを取り戻し、両社間で係争中の全ての特許訴訟に終止符を打つ決断に至ったようだ。Googleは、2012年にMotorolaを買収したが、2014年1月にLenovoへの売却を決断している。一般的に、AppleがMotorolaを攻撃するのは、間接的にGoogleのAndroid OSを攻撃するためだという見方が強い。故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏がかつて、「Androidは盗品だ」と非難していたことは広く知られている。AppleとMotorolaは今回、和解合意に関する諸条件については明らかにしていないが、クロスライセンス契約を締結しないことは明言している。また、両社は今後、“特許改革”の実現に向けて協業していく予定だとしているが、両社の目指す“特許改革”の内容については言及していない。
AppleとSamsungも和解に踏み出す?
AppleとMotorolaの和解は、大きな一歩だ。Appleは次なるステップとして、Samsungとの和解にも踏み出そうとしているのではないだろうか。
韓国の日刊英字新聞であるThe Korea Timesが匿名筋の情報として伝えたところによると、「Samsungは最近、Appleとの間で事務レベルでの協議を再開し、重要課題として、全ての訴訟を終わらせるための方策を検討しているようだ」という。AppleとSamsungは現在、世界10カ国以上において、係争中の未解決訴訟を抱えている。The Korea Timesは、「AppleとSamsungはミーティングを開催し、スマートフォン関連の特許をめぐる全ての訴訟を法廷の外で解決しようとしている。しかし、これを実現するのは至難の業だ。両社が保有する特許を相互に利用する際に生じるロイヤルティーの支払いなど、詳細な条件を調整して完全な合意に至るには、まだ時間を要するだろう」と指摘する。
Appleはこれまでに、米国内でSamsungに対する2件の訴訟で勝利を収め、10億米ドルを超える損害賠償を勝ち取っている。最初の訴訟判決が下されたのが2012年で、2件目は2014年5月初めだった。Samsungは、いずれの判決に対しても上訴している。Samsungに2件の有罪判決が下されていることからも、Samsungが損害賠償を支払うことなく米国内で訴訟を完結することなど、Appleは認められないはずだ。
FOSS PatentsのFlorian Mueller氏は、The Korea Timesのインタビューに応じ、「AppleとSamsungの特許係争は終局に向かっていて、2014年夏には終わるだろう。Appleは、エンドゲーム戦略を用意していないようだ。故スティーブ・ジョブズ氏は、Appleの特許ポートフォリオの能力を非現実的に高く評価していて、それに基づき熱狂的な野心を抱いていた。しかし今回、AppleがMotorola(Google)との間で合意に至ったことから、Appleの経営陣が、ジョブズ氏の面目を保ちながらも、長引く特許係争を終わらせるための戦略を模索していることが分かる。Samsungが、米国での特許侵害でAppleに損害賠償を支払うとしても、1回で十分だろう」と述べている。
訴訟は、当事者にとって大きな障害となるだけでなく、経済的な負担も大きい。AppleとSamsungは今後うまくいけば、和解によって特許訴訟を終わらせ、次に進むためのチャンスをつかむことができるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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