ドイツとイングランドの戦いは既にキックオフ? 最先端のゴール判定技術で【後編】:ワールドカップで本格的に導入(2/2 ページ)
開催を間近に控えた「2014 FIFAワールドカップ」。FIFAは、4つのゴール判定技術を認定している。後編では、前編で紹介した「GoalControl-4D」と「Hawk-eye(ホークアイ)」以外の2つ、「GoalRef」と「Cairos」を取り上げる。
GoalRef
GoalRefは、FIFAに採用される可能性が高かったシステムの1つで、「コスト効率が最も高く、かつ洗練されたゴール判定技術だ」と評価する声もある。最初にデンマークのメーカーが開発を手掛け、後にフラウンホーファーIISの研究グループが進展させたという。
フラウンホーファーIISのGoalRef研究グループでオペレーションマネジャーを務めるThomas Pellkofer氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「GoalRefは、カメラを使用したシステムに比べて低コストで、より柔軟性と信頼性が高い。画面を常に監視する必要がないため、オペレータも不要だ」と述べている。
GoalRefは、数本の高精度アンテナをゴールフレームに取り付け、ボールのブラダー(空気袋)と合成皮革の間に3つのコイルを埋め込むことで、ボールをリアルタイムで正確に追跡する。コイルには電源が不要だ。選手たちにとっては、ボールの特性や動きなどに影響があるかどうかが重要な懸念事項の1つとなっていたが、徹底的な試験を行った結果、こうした心配は全くないことが実証されている。
Cairos
Cairosシステムは、ドイツのCairos Technologiesと、スポーツ用品大手のアディダスが共同で開発したシステムだ。ペナルティエリアを細い電流ケーブルで囲み、電流を流して磁場を形成する。ボールに内蔵したセンサーが磁場の変化を検知して、ゴールの後ろに設置した受信機に暗号化データを送信する。そのデータは即座にコンピュータに送信され、ボールの正確な位置が分かる。ボールが完全にゴールラインを超えると、GoalRefシステムと同様に、審判に信号が送られる。
Watchlink
Pellkofer氏によると、フラウンホーファーIISは、GoalRefの他にも、新たなビジネスの可能性を秘める製品として、審判用の腕時計「Watchlink」を開発したという。WatchlinkはFIFAに認定されているので、あらゆるゴール判定システムで採用される可能性がある。同氏は、「もちろん、ブラジル大会で採用されるGoalControl-4Dシステムでも、Watchlinkが使われる予定だ」と述べている。
Watchlinkには、Texas Instruments(TI)のチップセット「CC430F6137」が搭載されている。Pellkofer氏は、「Watchlinkには、特許を取得した当社のソフトウェアとプロトコルが使われている。1個のトランスミッタでスタジアム全体をカバーでき、非常に電力効率がよい」と述べる。同氏は、Watchlinkが865M〜870MHzと915M〜930MHzの周波数を使って通信することも明らかにした。
ゴール判定システムを導入しても、最後の判定を下すのは審判である。さらに、どれほど高性能なカメラやコンピュータも、意図的なファウルなのかどうかは判断できない。観戦者の間で議論が何十年にもわたって繰り返される判定も出てくるかもしれない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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