「日本の製造業を再び世界一に」、アナログ・グルが語る:アナログ設計(3/3 ページ)
極めて優秀なアナログ回路技術者で「アナログ・グル」と呼ばれる日米4人の技術者が一堂に集まり、設計者が知っておくべきアナログ回路の特性や基本的な設計手法などについて語った。
保護機能やモニター機能などでリニアレギュレータが進化
引き続き登壇したDobkin氏は、リニアレギュレータが進化してきた歴史を振り返るとともに、内部に取り込まれてきた保護回路などについて紹介した。Dobkin氏によれば、「開発期間の半分はレギュレーションの機能開発に要した。残りの半分は保護回路の設計に時間を費やした」と述べるなど、その重要性を強調した。レギュレータ側で保護機能をきっちりサポートしておかないと、回路側でショートしたり、誤動作したりする可能性があるからだ。
1970年代より、カレントリミット機能が利用され始めた。さらに、短絡時に電流値を絞ることで回路を保護するフォールドバックカレントリミット機能などが搭載されている。熱からトランジスタを保護するサーマルリミット機能などもサポートされている。さらに最近のリニアレギュレータは、基準電流源を備え、低ノイズで並列接続を行うことができる。また、出力電流や半導体素子のジャンクション温度を監視するためのモニター機能を内蔵しているICチップもある。
利用するパワートランジスタの種類による特性の違いについても紹介した。PNP型は安全で、逆電圧でも設計でき壊れにくい。NPN型は高い出力電流に対応できる。FETはドロップ電圧が小さいが、他に比べて形状は大きい、などそれぞれに特長があるという。
各パワートランジスタを応用した自社のリニアレギュレータも紹介した。「LT3081」はPNP型トランジスタを用いており、オンチップトリミングにより出力精度が高い。「LT3080」はNPN型トランジスタを用いており、電流増幅率がフラットである。モニター機能はサポートされておらず、その分だけ制御ブロックの面積を小さくできたという。
Dobkin氏は、リニアレギュレータに基準電流源を内蔵するいくつかのメリットについても述べた。1個の抵抗で出力電圧を設定でき、しかも0Vまで調整することができる、リニアレギュレータを並列接続して高電流と熱の分散が可能、セットレジスタを用いノイズキャンセルが可能、といった特長がある。
2〜3カ月後に発表を予定しているリニアレギュレータ「LT3089」に関しても一部情報を公開した。入力電圧範囲が1.3〜40Vと広く、出力電流は最大800mAと大きい。入出力のキャパシタがなく出力電流をモニタリングして制御しているため、出力が安定しているのが特長だという。さらに、並列接続での利用を考慮し、オフセット電圧も大きく下げた。「5V±1mVの精度で出力することができる」という。
この他、新たに開発したいくつかのリニアレギュレータを紹介した。電流モニターやカレントリミット機能などを搭載し、出力とグラウンドピンを接続したネガティブリニアレギュレータ「LT3091」、スポットノイズが2.5nV/√Hzと極めて低い「LT3042」、出力電圧のモニタリング/診断機能や、ソフトスタート機能などを内蔵した「LT3072」などである。
最後に、受講者からの質問にも答えた。「新入社員だが、アナログ・グルになるためにどのような努力をすればよいのか」という問いかけに対して、Dobkin氏は自らが執筆したアナログ回路設計実例集を紹介し、「開発済みのさまざまなアナログ回路を掲載した書籍などで見聞を広めていくことも大切」と語り、講演を終了した。
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