LED光源にスマホをかざすだけで情報取得、パナソニックの「光ID」:伊勢丹新宿本店で、体験会も実施予定
パナソニックは、LED光源にスマホのカメラをかざすだけで、さまざまな情報を素早く受信する技術を開発した。LEDを高速に点滅させて情報を送信する可視光通信技術を基にしたもの。店舗から情報を送信したり、博物館や美術館で展示品の解説を送信したりといった用途を想定している。東京都の伊勢丹新宿本店でのサービス体験も行われる予定だ。
パナソニックは2014年12月11日、LED光源から発信されるさまざまな情報を搭載したID信号(以下、「光ID」)を、スマートフォン内蔵のイメージセンサーと専用アプリで高速受信する技術を開発したと発表した。LEDを高速点滅させることでさまざまな情報を送れる可視光通信技術を基にしたもの。
従来の可視光通信方式を利用した光IDをスマートフォンを用いて読み取るためには、1)専用の受光器をスマートフォンに装着する必要がある、2)十数ビット/秒という低速でしかデータを送れない、といった制約があった。
パナソニックの技術を利用すると、スマートフォンに専用アプリをインストールするだけで、スマートフォンと光ID発振機器(デジタルサイネージやLED照明など)の間で、光IDの送受信が数kビット/秒と高速で行えるようになる。
位置合わせや電波干渉は考慮不要
光IDを用いた技術は、QRコードやARマーカーなどの画像読み取り方式とは異なり、受信時に読み取り位置を合わせたり、複雑な画像を認識処理したりする必要がない。対象のコードから離れた場所*)からでも、スマートフォンのカメラを、LED光源にかざすだけで光IDを受信することができる。
*)例えば、横幅1mのデジタルサイネージディスプレイをLED光源に使った場合、約5m離れた場所から光IDを受信できる。
光IDの受信には、スマートフォンのイメージセンサーを利用する。イメージセンサーで取得した画像をブロック単位に分けて情報を読み取っているため、スマートフォンの動画撮影スピード(フレームレート)を超える速さで、素早く情報を読み取ることが可能だ。
また、Bluetoothや超音波などを用いた情報送信方式のように、電波干渉・音波干渉を考慮する必要がないため、隣接する場所で複数の光ID発信器を設置し、さまざまな情報を提供できる。
店舗などからの情報送信や、案内看板の多言語化対応の補助、美術館や博物館での展示内容の解説といった用途を想定している。さらに、三越伊勢丹ホールディングスおよび伊勢丹新宿本店の協力を受け、この光IDを使った情報提供サービスの体験会を実施する予定だ。
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