有線通信編:40Gビット/秒の超高速伝送を実現する回路技術:徹底プレビュー「ISSCC2015の歩き方」(7)(2/2 ページ)
無線、有線ともに、通信技術への関心は高い。今回は、第6回の無線通信技術に続き、有線通信の注目講演を紹介する。具体的には、低消費電力の10Gビット/秒シリアルリンクや、シリコンフォトニクス技術による高速トランシーバなどがある。
消費電力を低減した10Gビット/秒のシリアルリンク
セッション10(先端有線通信技術とPLL)では、消費電力を下げた有線通信回路の研究開発成果が数多く発表される。
スイスのローザンヌ連邦工科大学(EPFL)とスイスの半導体開発企業Kandou Busは共同で、7.5mWと消費電力が低く、7.5Gビット/秒を伝送するシリアルデータ・トランシーバを発表する(講演番号10.3)。マルチドロップのメモリ・インタフェース向けである。製造技術は40nmのCMOS。
米国のIntelは、1ビット当たりのデータ転送エネルギーが5.9pJと低いシリアルリンクの開発成果を公表する(講演番号10.5)。データ転送速度は10Gビット/秒。MM-CDR(Mueller-Muller baud-rate Clock Data Recovery)機能を備える。製造技術は14nmのFinFET CMOS技術である。
スイスのIBMは、2タップの判定帰還等化器(DFE)を備えた、16Gビット/秒対応でGビット/秒当たりの消費電力が2mWと低い受信器を発表する(講演番号10.6)。プログラマブルなアクティブピーキング・トランジスタアレイを有する連続時間線形等化器(CTLE)を内蔵する。
このほか、フラクショナルN PLL回路の開発成果を台湾MediaTek(講演番号10.8)と米国IBM(講演番号10.9)がそれぞれ発表する。
25Gビット/秒のシリコン光リンク技術
セッション22(高速光リンク)では、電子回路と光回路を融合したシリコンフォトニクス技術による高速トランシーバの講演が相次ぐ。
富士通研究所や富士通などの共同研究グループは、ハイブリッドシリコンフォトニクス技術による25Gビット/秒のトランシーバを発表する(講演番号22.2)。製造技術は28nmのSOI CMOS技術である。富士通研究所は、光リンク向けのリタイマーICの開発成果も公表する(講演番号22.7)。25.78Gビット×4チャンネル出力である。製造技術は130nmのシリコンゲルマニウム(SiGe)・バイポーラCMOS技術。
ベルギーのimecを中心とする研究チームは、波長分割多重(WDM)リングをベースとするシリコンフォトニクス技術で実現した20Gビット/秒×4チャンネル(合計で80Gビット/秒)のトランシーバを報告する(講演番号22.5)。
米国のOregon State Universityを中心とする研究チームは、シリコンフォトニクス技術による25Gビット/秒のトランスミッタ(送信器)を発表する(講演番号22.6)。2タップの非対称フィードフォワード等化器(FFE)と動的温度調整器を搭載した。製造技術は65nmのCMOS技術である。
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